2022年11月3日木曜日

​​ISSUGI 「366247」 RELEASE LIVE @WWWX

 ISSUGIのニューアルバム『366247』のリリースパーティーをWWWXまで見に行った。コロナ以降、何回かライブには行っているものの基本ホールのようなものにしか行っておらず久しぶりに満員のライブハウスでライブを見ることができた。ライブの尊さがめちゃくちゃ伝わってきて最高の上の上の体験だった。

 今回のアルバムは明らかに過去作とモードが異なっており、リリックの具体性がかなり顕著になっている。それは彼の思想の部分であったりアティチュードであったり。インタビューにおいても、

今までも勿論言葉を大事にしていたんですけど、もっと大事にしなくちゃ次のレベルにはいけないって思いながら作ってました。言葉の表現力とか刺さる歌詞って自分がヒップホップ聴いててカッケーってなる部分の1つなので。

と語っていて、日本のヒップホップの盛り上がりに呼応しつつ思うところが色々あるのだなとアルバムを聴きながら感じていた。

 今回のライブは盟友Scratch Nice がBack DJを担当しており、そのタッグで『366247』の収録曲を中心に過去曲も散りばめつつ1時間強ほぼノンストップでスピットし続けていた。これまで何度もISSUGIのライブを見ているけど、この日はアルバム同様、モードがこれまた今までと異なっていた。とにかくお客さんをアジテートしてライブをお客さんと作っていくグルーヴが最高に心地よかった。曲間でMCといえるほど話さないのだけど、次の曲を歌うにあたり、自分がどういう気持ちなのかを伝えたり、観客に投げかけたりすることで曲に入ったときにさらにブチ上がれる。それこそ仙人掌がFeatで参加している「Ethlogy」でスピットしているように「"誰か理解る奴が理解ればいい"ってのはナシにした」のかもしれない。

 各曲に言及していくとキリがないけれども、やはり「from Scratch」が個人的なハイライト。シングルがリリースされたときから大好きな1曲だしRhymesterの「B-BOYイズム」を塗り替えた21世紀における新たなヒップホップアンセムとさえ自分自身は思っている。それをISSUGIの生のバイブス満タンの声、それを聞いたお客さんもブチ上がり、という条件が揃ったことで泣いてしまった。ライブで泣いたことは今まで一度もなかったけれど、コロナで我慢していた音楽をライブで楽しみたい感情が心の奥底にあったことに気付かされた。

 またScratch Niceのターンテーブリズムがライブ全体のグルーブに寄与している部分が相当に大きい。曲の終わらせ方、カットインのタイミング、すべてが一級品。曲順もScracth NiceがISSUGIの曲でDJしているのかと思わされるほどで最高にかっこよかった。DJがただ曲を流すだけと思われて軽視されがちな最近、彼のライブDJおよびライブ後のDJはその雑音をかき消すに十分だったように思う。デイタイムのライブで客入れのDJはよく見るけどライブ後に客出しではなく、あくまで一つのショウケースとしてDJタイムを用意するところにもISSUGIの考えるヒップホップ観が表現されているのかと思った。あとお子の関係でクラブへ気軽に行けなくなった今、爆音でヒップホップを聞ける喜びを改めて思い知った…

 SPARTA、Kid Fresinoが欠席だったもののゲスト陣も皆かっこよく印象的だった。「俺の周りのかっこいい仲間」という等身大のスケールを持ち続ける男のかっこよさがそこにあったし、何よりゲストがバースをキックしているときの彼の充実した顔が全てを物語っていたと思う。その中でも圧倒的だったのはやはりBESだろう。ISSUGIとBESで二枚アルバムがリリースされており完全無欠のタッグなのは間違いなく本当にブチ上がった。BESはとにかくバイブスが段違い。見ている観客が彼のラップのグルーヴにぐいぐりのめり込んでいく、そんな一体感を感じることができて至福の体験だった。またMONJUのコンビネーションはもちろん間違いなくて、特にコロナを経た今聞く「In The City」は感慨深かった。

 個人的に久しぶりのライブということを差し引いても今回のライブは本当に圧倒的だったと思うし、閏年も含めて全部飲み込むISSUGIがワンマンにかけた熱量を十分に味わえて本当に楽しかった。これからも彼の音楽についていきたいと思う。


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