2021年11月13日土曜日

家族と社会が壊れるとき

家族と社会が壊れるとき/是枝 裕和, ケン ローチ

 2人とも好きな映画監督だったので読んでみた。対談とそれぞれの書き下ろしは興味深い話の連続でオモシロかった。2人とも「社会派」と呼ばれる映画監督だと思うけれど、その背景にある映画への思想は異なっている。けれど、お互いへのリスペクトを欠くことはない雰囲気が対談からは伝わってきた。

 ケン・ローチは義父からレコメンドされた「家族をおもうとき」があまりにもオモシロくて、すぐに「わたしはダニエルブレイク」も見た。本作は主にその二作にフォーカスがあたっており映画の内容を補完できるので、そういう意味でも興味深かった。何よりもオモシロいのはケン・ローチがゴリゴリの社会主義者であること。特にコロナ禍においては公的サービスの脆弱さがモロに露呈することが多かったと思うけど、それはイギリスも日本と変わらないようで国や企業といった支配階級への怒りを滔々と書いたり話したりしている。自分自身はここまで振り切った社会主義に賛同するわけではないけど、環境問題をはじめとしてひたすら成長を追い求めた結果のツケがコロナ禍もあいまって今露呈しているのは間違いないと思う。ゆえに彼の主張になるほどなと思うことが多かった。

 一方の是枝氏はある意味日本人ぽいというかノンポリに近いスタンス。けれど今の日本は右と左といった議論以前に民主主義の土台の部分がめちゃくちゃになっている点を厳しく指摘していてそれに同意した。2人の映画は自分の主義や主張が先行しているのではなく、あくまで社会の風景を彼の視点で描写することで、それらが浮き上がってくると説明されていた。ゆえに映画においてはカメラを置く位置を大事にしているという話もあり、誰かに寄り添う気持ちを2人が持っているからこその合致なんだろうなと感じた。ケン・ローチの作品は2つしか見れてないので他のも見たい。

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