乱読のセレンディピティ/外山滋比古 |
『乱読の地層』というタイトルを思いついたときに、類似の書名がないかとGoogleで検索してヒットしたので読んだ。『思考の整理学』というクラシックを残した著者による読書スタイルのススメといった内容で興味深かった。
全体に説教じみた文体だなと読み始めてすぐに感じたのだが、本著を刊行した段階で91歳ということで納得。90歳超えて本を書いているあたりに著者の並々ならぬバイタリティを感じざるを得ない。読書は高尚なものというイメージが先行しているが、そんな大したものではない。もっと気軽に適当に読めばいいという主張がメインとなっていた。冒頭で「書評なんて意味ない!」と喝破しており、書評ばかりしている立場からすると面食らった。後半で忘却が大切と主張しているのだが、私はレビューすることで忘却を促している側面があり、その点では著者と同意見であった。
乱読を推奨しつつ「読んでばかりでは知識バカになる。もっと思考すべき」という逆説的な主張もあった。著者はその点を本著で実践しており、自分の人生経験に基づいて思考した見立てを藪から棒よろしく突き出してくる。知識や事実が偏重されている最近の社会では、この手の世迷言を聞かなくなっているので逆に新鮮だった。
そして肝心のタイトルについては、まさに自分が考えていたことがそのまま書かれていた。特定のジャンルばかり読んだり、一冊を精読するのではなく、本がこれだけたくさんある状況では、とにかくたくさん読めと。そこから生まれるセレンディピティこそが読書の財産であろうという話は至極納得した。ジャンルを色々読むことは意識しているものの、今の時代は「ハズレ」を回避する術がいくらでもあり、正直自分自身もノリで読むことはほとんどない。しかし著者は「失敗を恐れるな!」とこれまた喝破してくる。みんなのお墨付きを精読するのではなく、パーソナルな読書体験を作っていく意味でも、これからも乱読道を突き進みたい。
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