シミュレーショニズム/椹木 野衣 |
最後の音楽で話題に出ててオモシロそうだったで読んだ。正直ところどころかなり難しい内容で目が滑ることが多いながらも何となく読み終えることができた。それは音楽やアートがテーマになっているからだと思う。もとは1991年にリリースされたものだが今読んでも刺激的で新鮮な論点がたくさん載っており勉強になった。
主題となるのはサンプリング/カットアップ/リミックス。前半はアート、後半はハウスミュージックに対して主題からアプローチしていく。アートのチャプターでは美術館の説明書きを読んでいるかのよう。知らない単語が頻出しつつ具体的な作品に対する論考が多い。なので読みにくいもののネットでググりながらだと比較的理解が進んだ。その中でサンプリングに関する記述で納得したのは以下のラインだった。巷ではサンプリングとパクリの違いが議論となるが下記のラインですべて説明される気がする。特に後半の「ブロウ・アップ」がキーワードだ。
サンプリングのアーティストたちは、ある対象に徴候的に潜在するものの、当の対象にあっては非本質的な少数性でしかないものを異化変形してブロウ・アップしてみせるということだ。
ハウスミュージックのチャプターでは音楽における主題が果たす役割について論考が展開されている。ハウスが新しい音楽として紹介されていることに時代を感じつつ、相対的に権威主義としてのロックが失墜している話が興味深かった。元々ライブがバンドを教会のように崇めるようにみるのとは対照的にクラブでのハウスミュージックは崇める対象が不在である。(DJはいるけど)脱中心化についてつぶさに考察されていた。またブライアン・イーノをめぐるアンビエントに対する話も知らないことばかりで勉強になった。
最後にまとめのチャプターが用意されており、そこでは上記2つに収まらない議論がそこかしこで転がっている。正直追いきれていない議論が多いものの、白人によるロックのアプロプリエーションからヒップホップの勃興という流れの議論は新鮮だった。またエコノミーからエコロジーへという話は最近のSDGsにも通ずるものであり、ファッションのようにこの手の話も数十年単位で繰り返すのだなと改めて認識した。ここまでのレビューを読んでいただいてわかるように正直全貌がまったく掴めていないのでタイミングで繰り返し読まないといけない本だった。
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