自分のために料理を作る: 自炊からはじまる「ケア」の話/山口祐加、星野概念 |
ここ数年ずっとテレワークで、なおかつ最近はパートナーが出社しており1人で昼食を取っている。こうなると結構適当になりがち。外食もするのだが飽きてしまったり、逆に内食ばかりでも疲れてしまったりで悩んでいた。そんな状況に対して参考になりそうだったので読んだ。もともと料理する方だけど、その動機、初心を取り戻させてくれる読書体験で良かった。
料理家の著者による自炊論考、相談者との自炊に関する対話、料理を作るヒントの3部構成となっている。自炊論考では自分自身もぼんやり考えていたことが明確に言語化されていた。料理は美味しいか、美味しくないかの二元論になりがちだけど、そうではない。そのプロセスにこそ醍醐味が詰まっているのだという主張はとても納得した。大人になると上手くなることってあんまりないけども、食べないと生きていけないがゆえに毎日取り組む料理はトライ&エラーのサイクルが短くフィードバックをすぐに得られるのが好きなところというのは著者と同意した。
最大の魅力は2部の相談者との対話。自分のための自炊に悩める人々との対話する中で、具体的な料理方法からどうして料理するのかまで、結論ありきではなく会話の中で答えを探して会話がスイングしているのがオモシロい。また星野概念氏参加パートではオープンダイアローグを採用。(相談者は会話に参加していないが著者と概念氏の会話を相談者も聞いてる状態)風通しの良さを担保しつつ自炊に関する論考が深まっていく過程は自分もその場にいるようで楽しかった。
料理に大きくフォーカスしているが、そこに閉じずに広い意味で自分の手で何かを生み出すことの意味についても話されている。今の時代はSNSを筆頭にした相対評価が当たり前で自分による絶対評価を大切にできていないことに気付かされる。以下の文は何かトライするときには常に思い出したいライン。
せっかちで、待てなくて、なんでもすぐにできるようになりたい。ついそう思ってしまいますが、下手には下手なりの味わい深さがあるなぁと子どもたちを見ていてひしひしと感じるのです。何事も上手になってしまったら、小さい成長の喜びはもうやってこない。始めたばかりの下手な時期にしか体験できない感覚や心の動きが必ずあります。それは大人も子どもも変わりません。
結局何を食べたいのか、自分の中でしっかりと向き合うことが大事だと気付かされた。ちょっと前までは考えるの面倒なのでルーティン化してしまうことを考えていたけれど、ルーティンとインプロビゼーションのバランスを模索し、調理を駆使しながら自分がご機嫌になれる食事を目指したい。
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