自由対談/中村文則 |
次何読むかなーと思ってたらAmazonでレコメンドされて気付いて読んだ。ここ10年近くの著者の対談がまるっと収まっており特大ボリューム&超豪華ゲストの濃すぎる対談集でとてもオモシロかった。著者の作品は比較的初期から読んでおり、ほぼ全作読んでいるものの、何年も前の場合が多く本の内容に関する記憶が曖昧だったのがもったいなかったかも…少なくとも『銃』『掏摸』は読み直してから本著を読んだ方が楽しめると思う。
すべてが対談形式なのでリーダビリティがとても高い、かつ好きな作家なので彼の考えを他者との会話からうかがい知ることができて楽しかった。特に小説の書き方、無意識が駆動する物語という話は繰り返し登場しており、それゆえの境地があるのが興味深かった。(あとがきでエクスキューズがあったけども)好きだった対談は社会問題・テクノロジーのパート。小説家でもノンポリの人が多いかもしれないが、著者は賛否あれども小説をつうじて自分のスタンスを明確にしているからこそ色々と踏み込んで話ができていてかっこいい。
本を読んだときの作家と一般的な読者で得ている情報の量の違いに驚いた。職業だから当然とはいえ、一つの作品から感想を含めた考察まで見えている風景が違いすぎる。「読めてない」とはよく言われるけど初めて肌感として理解できた。あとは再読の大切さも学んだ。特に後半の怒涛のドフトエフスキーの論考は圧巻…翻訳者と対等に議論しているあたりに著者のドフトエフスキー愛が溢れていた。『罪と罰』はかろうじて読んでいるけど、もっとも話題にあがっていた『カラマーゾフの兄弟』が未読なので読みたい。これらも含め本著は優れたレコメンド本にもなっている。
中村文則作品を読んでいない人でも本著から入って読みたくなるケースもあると思う。また俳優、ミュージシャン、作家、学者とジャンルを問わずビッグネームの連発なので著者の読者であれば、このメンツ並んでいて読まない選択肢を取ることはまずないはず。ゆえに万人におすすめ。
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