思い出すこと/ジュンパ・ラヒリ |
ジュンパ・ラヒリの最新作が出たと聞いてすぐに読んだ。まったく内容を把握しないまま読んだら、かなりトリッキーな作品で驚きつつ余韻があった。詩のことを理解するまでにはまだまだ時間を要しそうだけども…
ラヒリ自身がまえがきを担当していて、彼女がイタリアに住むその家にあった机から発見された断片的な詩を著名なイタリア語学者が編纂した、という設定の本著。実際にはラヒリの1人3役らしい。訳者あとがきによると、この手のギミックはよくある技法らしいのだが、全く気付かず額面どおり受け取って読んでいた。
詩とは言いつつ抽象度は低くて生活の具体的な描写が多いので、詩をよく分かってなくてもおおいに楽しめた。とはいえエッセイや日記よりは抽象度は高い。詩だからこそ読者側で想像する余地が小説よりも残っており、こういうタイプの詩なら今後も楽しめるかもしれない。好きなラインを引用。
人生の枠組みは 「死ぬ」も含めて 取り除かれるべき不定詞の連続
<<Svarione>>誤字 長く残り わたしが何者かを示す機会
動物のように人のあとに従うことを 羊のようにおとなしくなるという。 今では逆のことをするよう勧めるが あの日は色とりどりの群れのなかに 暢気に入っていてほしいと思ったのだ。 おまえがわたしと似すぎていたから。
解説付きというのもオモシロい仕掛け。正直イタリア語の言語的な構造解説を日本語訳された文から感じ取るのは難しかったものの、引用や「こういう意図なのかもしれない」といった考察もあって単純に詩があるだけよりかはいくらか理解が深まった。しかもそれが自作自演だと踏まえるとさらにオモシロくなる。訳者あとがきによるとエッセイ、短編集の刊行が控えているらしいので、そちらを楽しみに待ちたい。
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