2023年7月12日水曜日

2023年7月 第1週

 今週も色々あったけど、なんといってもMACCHOとKREVAの邂逅が日本のヒップホップを長年聞いてきた身からすると本当にアガった。ZORNがひたすらKREVAに対して平身低頭を貫いてきたのは、この日のためだったのでは?と思わざるえないくらい完璧なインサイドワークで感動した。(KREVAへのマキシマムリスペクトは当然として)肝心の曲自体もスタイルウォーズかましまくり。己を貫くMACCHOとMACCHOの土俵に入り込む余裕さえ見せるKREVA。まあ端的にいって最高最高。そして、この邂逅を直前に的中させていていたポッドキャストがありますので、未聴の方は未来人の気持ちで是非聞いてみてください。ちなみに曲名までニアミスしてます。

YUHNWAY by YUHNWAY

 AP Alchemyの傘下となったWEDAPLUGG RecordsのYUHNWAYが久しぶりのアルバムリリース。セルフタイトル付けるのはかなり大上段な構えだなと思ったけど、ダンスミュージックを大いに取り入れた快作だった。ラップもできるし、ガッツリ歌もいけるので、ビートに合わせて最適解を引き出している感じだった。トラップ、ジャージークラブ、ドラムン、ネオソウルまで色んな要素を盛り込みつつ、それぞれのビートのクオリティが死ぬほど高い。featはラッパーのみでBlack nutの2人とKid Milliというガチっぷりからして信用できる。今年の隠れた名作だと思う。好きな曲はムードによって変わるけど、どストレートなメロウソング”Ibiza”

NOWITZKI by Beenzino

 韓国ヒップホップ界のレジェンダリーなMCの1人Beenzioがついにアルバムをリリース。往年のバスケ選手の名前をタイトルに掲げた作品はもう完全にAOTY級。いや2020年代を代表する1枚だと思うくらい最高だった。何か新しい雰囲気やサウンドとか特にないのだけど、何回も聞いてしまう…いくら練習しても身につかないセンスが炸裂しまくり!近年のTyler the creatorを思わせるサウンドの豊かさを感じた。分かりにくいけど、こういうのもヒップホップマジックが起きていると言えるような。彼なりの審美眼が明確にあり、それは有名、無名問わないfeatやproducerの招集からも分かる。後半のメロウな展開が特に堪らなく好きだった。中でもSlomがproduceした”Sandman”が好きな曲。

RED GROOVE by KOREANGROOVE

 KOREANGROOVEのGROOVE三部作?の完結編。三作の中で完成度一番高くて2000-2010年代のヒップホップを想起させつつアップデートした現代のラップのスタイルで新鮮に聞こえた。赤色だからか過去二作に比べてフロアライクなサウンドなのが良いし、かなりファレル味強いところも個人的にアガった。好きな曲はマリンバの音とフックが気持ちいい”MJ SLIDE”

ISSUES by CYBER RUI

 CYBER RUIのEP。コンスタントにまとまった作品をリリースしていてクオリティも落ちないのですごいと思う。サウンドのクールネスはこれまでどおり一貫して保ちつつリリックが熱を帯びている、このギャップがオモシロい。Pop Yoursのフィメールマイクリレーに呼ばれていないどうのこうのあるけど、彼女の世界観が明確にあり既存のヒップホップの枠を拡張する1人だと思っているので、このまま自分のやりたいことを貫いてほしい。グローバルな形で全員捲ってくるかもと思う。好きな曲はそんな気持ちも透けて見える”Monologue” くだらないもん baby suck it up!!

Blowout by John Carroll Kirby

 Stones Throwからハイペースで作品をリリースしているキーボーディストのJohn Carroll Kirbyの新作。日本では水原希子のボーイフレンドというのが話題先行するかもしれないけど、毎回作風が違って楽しいし今回は80sっぽさありつつパーカッションの多用が気持ちいい。特にヒップホップ聞いていると808疲れするので、こういう生楽器の音のハーモニーに癒される。好きな曲は”Gecko Sound”

Tony Allen JID018

 Adrian YoungeとAli Shaheed MuhammadによるJAZZ IS DEADシリーズの18作目。もう18作も出ているのか!という驚き。聞けてないのたくさんあるので聞いていきたい。それはさておき18作目はドラマーのTony Allenをフィーチャー。2020年に亡くなっているがその前に録音していた音源らしい。Fela Kutiとのコンビネーションが有名なアフロビートの元祖だけども、本作ではヒップホップのネタになりそうな刻みまくりのドラムブレイクをひたすらに叩きまくっていてめちゃくちゃ好き。ファンキーなドラムは無限に聞いてられるし、こういうディレクションできるJAZZ IS DEADはオモシロいプロジェクトだなとあらためて感じた。好きな曲は”Don’t Believe the Dancers”

Swells by K-LONE

Living Like There's No Tomorrow, But Killing Yourself In The Process by Laurence Guy

 まだまだ個人的な四つ打ちブームは過ぎておらず、その中でよかった2枚。いずれもUKのプロデューサーでアルバムになるとハウスだけではなく他のテイストの曲も入っているのでビギナーでも聞きやすい。特にLaurence GuyはInterludeを挟んで大きく二つの構成になっていて、後半はラッパーを迎えた曲になっているのでかなり好きだった。イントロとアウトロも凝っているし繰り返し聞いていた。

STILL PRETTY by Eem Triplin

 DJ Dahiのインスタのストーリーで知った。ペンシルベニア出身で最初はビートメイキングからキャリアをスタートし、$NOTとの楽曲制作で一気に名が知られたラッパー。声が特徴的でかっこいいしビートもメロウさがあって聞きやすい。先行シングルの”TELL ME IM RIGHT”のアウトロにスクラッチ入っててめっちゃアガった。この手のラッパーでスクラッチをこんなにフィーチャーしてる人あんまいないと思う。Dahi含めたヘルプありつつも全曲セルフプロデュースらしく分かってるなーと思う。好きな曲は”WASTED TIMES” 同じギターのフレーズをどこかで聞いたけど思い出せない…最近こんなんばっかり。

2023年7月11日火曜日

キッチン

 

キッチン/吉本ばなな

 著者の新刊リリースの情報が目に入り、そもそも一冊も読んだことないなと思って代表作から読んでみた。(粋な夜電波リスナーとしての親近感は以前から持っていた)概念としての「孤独」ではなく、本当に身寄りの人がいなくなる「孤独」との対峙にまつわる本でオモシロかった。

 文体の独特の軽妙さとそれによる抜けの良さによって、話の重さや不思議さが優しいニュアンスになっているのが特徴的だと思う。家族を失い孤児になった主人公が身を寄せる家族が日本従来の家制度とはかけ離れた形(シングルかつトランスである母(元父)とその息子)である点が興味深い。1987年のリリースで、このジェンダー観はかなり進んでいるなと思っていたが、学術的な考察を読むと、キッチンを女性に縛り付ける性役割のニュアンスを感じている海外の方もいるらしい。個人的には逆の印象。この論文の著者の考察も同意見で、性役割ではなく人間の活力の源である食事、そしてそれを準備するキッチンが彼女が再生する一助となっていると思う。日本は家庭料理のカルチャーが色濃く存在し、血の繋がりはなくても共同体としての家族が形成される際に食事が担う役割の大きさや安心感が軽やかに言語されていると感じた。他の作品も読んでみたい。

2023年7月7日金曜日

チョーク!

チョーク!/チャック・パラニューク

  早川書房のセールでチャック・パラニューク作品も安くなっていたので読んだ。前から読みたかったけどプレ値で読めなかったところ、いつのまにか電子書籍化されていて大変ありがたい…それはさておき本作もめっちゃチャック・パラニュークな作品でオモシロかった。読み進めるの大変なところもありつつ彼ならではの現代への考察が含まれていて興味深い。元は2001年のリリースだけども今でも十分通じるような風刺が多く含まれていた。

 主人公が医学部中退でSEX中毒というなんとも言えない退廃的な設定。彼のアイデンティティの揺らぎを中心に話がひたすら進んでいく。主にはバイト先の話、入院している母親とその病院の話。時系列としては子どもの頃と現在をチャプターごとに交互に語っていくようなスタイルなので最初は混乱しやすい。タイトルにもなっている「チョーク」の設定がとにかくオモシロかった。レストランで食べ物をわざと自分で喉に詰めて周りの客に助けさせる。その客は一躍ヒーローとなり世間から脚光を浴びることになり、承認欲求が満たされたパトロンとして彼に定期的に連絡を取り小切手を送ってくる…この手口をそこかしこで繰り返して金を稼ぐ。こんないじわるなことをよく思いつくなと思う一方で、そのありがた迷惑を含む善意で満たす承認欲求というのは今のSNSにそのまま当てはまる話でもあり、彼の先見の明に脱帽するばかり。(人間が進歩していないのか) 他にもウオッと思ったラインを以下引用。

私たちは自分が理解できないものとは共存していかれない。何かを説明できなければ、その何かをただ否定する

私の世代は、私たちはいろんな物事を笑いものにしたけれど、そのことで世界がよりよい方向に動き出してはいない」母は言う。「他の人々が創り出したものを批判するのに忙しくて、私たち自身はごくごくわずかなものしか創り出してこなかった」

僕らはすべてのものにラベルを貼り、説明をつけ、解剖せずにはいられない。それが絶対に説明不可能なものだとしてもだ。たとえ神でもだ。〝無害化された〟はふさわしい言葉ではないが、頭に浮かぶ一つめの言葉だ。

 代表作のファイト・クラブは資本主義や消費社会に対して挑んだ小説だけど、本著はアイデンティティにフォーカスして、その自己認識はどうなんだ?と繰り返し問う内容だと感じた。チャック・パラニュークは読むのしんどいけど、読後感は彼だからこそというものがあるのでセールで買ったもう一冊も楽しみ。

2023年7月5日水曜日

2023年6月 第4週

 今週は日本のヒップホップのアルバムで素晴らしい作品が多かった。中でもSadajyo、UNDER DOGGSのアルバムを聞いて思ったのは、オーディション番組で作られる価値観がすべてだと思わせてしまう功罪だった。当然間口を広げる意味で、かっこよさの基準を明示しヒップホップの理解度を高める意味でオーディション番組が効果的なのは間違いない。けれど、そこに当てはまらないからダメなわけでは決してないし、なんならヒップホップはその価値観を伸長してきた歴史を持つ音楽だからこそ色んなスタイルがあってほしい。

Golden Virginia by Sadajyo & Jeff Loik

 Sadajyoの1stアルバムがリリース。QNとの曲で知ったアーティストで、RAPSTAR誕生においてTOP10まで残ったことで認知が高まり満を辞してのアルバムという感じ。これが手垢のついた「ブームバップ」とは一線を画す内容でめちゃくちゃ良かった。Jeff Loikのビートは昔のFLA$HBUCKSやSIMI LABのアルバムを彷彿とさせるサウンドデザインでサンプリングベースなんだけど、ドラムやサンプルが細かく刻まれており単純なループではないのがいい。SadajyoはSEEDAの表現を借りれば日本語を「ベンド」してグルーブを作っていくスタイル。そのねちっこいフロウとイカついビートが絡み合って化学反応が起きていた。好きな曲はSwizz Beatzっぽい”Jungle”

READY 4 by UNDER DOGGS

 KID PENSEURとSTICKY BUDSによるユニット?のUNDER DOGGSのアルバム。ジャケがもう最高なんだけど、内容も素晴らしかった。大阪のシーンで脈々と受け継がれるB-BOYの遺伝子ここにありという感じで自然に首がふれるやーつ。若い人たちは別にビートのスタイルとして90s主義とかでもないので、いろんなビートの中で渋いラップをスピットしていくのがおじさんとしては新鮮な気持ちになる。好きな曲は”No Sugar”

Grandma's Wish by CHICO CARLITO

 Chico Calitoが昨年に続いてアルバムをリリース。前々作とのリリーススパンを考えるとかなりハイスペースのリリースとなっている。オーセンティックなスタイルのThis is HIPHOPなアルバムでかっこよかった。バトルで対戦したBonberoを招いた曲”ベストキッド”は2人のスタイルウォーズが面白いし、ビートもパーカッションでドリルのパターンを刻んでいたりで聞きどころたくさん。他の曲もリリックとフローの質が両立していてかっこよかった。個人的には王道よりも変則的なビートでの彼のラップが聞きたい。

Inner Division by Shin Sakiura

 プロデューサーのShin Sakiuraのアルバム。前のアルバムを友人に教えてもらってその時の衝撃をそのままに今作も素晴らしかった。1曲目のKaytranadaよろしくな曲でもう勝負ありって感じで多くの曲が四つ打ちのダンスミュージックでアガる。あと大きい音で聞くと低音のエグい鳴りとか各楽器の立体感がとても伝わってきて気持ちよさがパない。素人ながらにミックスがいいんだろうなと感じた。本人によるセルフライナーノーツがInstagramで公開されていてそこにも音へのこだわりが綴られていたので納得。初めて本人の歌唱も入っているのだけど、それもまたよし。好きな曲は”Magic”

Stimulate by Tensnake

 信頼の橋本徹レコメンド。ディスコ経由のエレクトロ、ハウスみたいなサウンドで最近聞いてなかったので、とても新鮮だった。DJしていた頃なら絶対かけてたと思う。比較的ポップな中にディスコバイブスが見え隠れする一方、”Take Your Time(Do It Right)” みたいなカバーもあったり。最近はロウなバイブスがどっちかといえば好みなので、好きな曲は”Brain Food”

Fine Tune by Terrace Martin

 サックスプレイヤーでありプロデューサーでもあるTerrace Martinのアルバムがリリース。 最強ジャズミーツヒップホップコレクティブのDinner Partyへの参加も記憶に新しい彼だけど、アルバムは色んな曲がってめちゃくちゃ聞きやすくて良かった。これまでウェッサイなムードの曲のイメージがあったけど本作にはストレートなジャズも収録されていて、それがアクセントになってアルバム1枚でプレイリストのような構成になっている。朝は基本これを聞いていた気がする。好きな曲はドラムが刻みまくりなのとサックス、トランペットの絡みが気持ちいい”3am Traffic”

2 Kids On The Block Pt. 1 by Dynamic Duo

 DymamicduoのEPがリリース。イントロで俳優のイ・ビョンホンがナレーションしているというとんでもないカマシから始まるのにびっくり!2人のラップはベーシックなスタイルでベテランの安定感があるし、オーセンティックなGRAYのビートとの相性がいい”19”なんて最高。だけどビビったのはRUN DMCの”Pied Pipers”のオマージュをかました最後の曲。今これやるのアツ〜だし2人の掛け合いも最高。アルバムがどんな作品になるかのか楽しみになった。

S3X AND THE CITY by Jayci yucca & dnss

 友人に教えてもらって知ったやつ。Jayci yuccaがラッパーでdnssがプロデューサー。現行USモードバリバリでラップがかっこいい。アトランタっぽくて”Ganges”、”Pop 2 Pills”とかめっちゃそれ。(”Ganges”、Metro Boominで同ネタ曲あったような…)こういうのゴロゴロいるのが韓国のヒップホップの底の厚さを感じる瞬間でもある。AmbitionやDaytonaとのコネクションの強さがよく分かるFeat陣も豪華で良い。好きな曲は”Sober”

[ Rorschach ] Part 2 by PENOMECO

 PENOMECOのEPは前作の続き。前作でもイメージを裏切るスピットスタイルを見せていたが今回もそのスタイルは健在。甘い声のシンガー扱いされるのを嫌だと思ったのか、ギャップ狙いなのか。友人とも話していたが、今回のPENOMECOのようなケースやスピット系のラッパーのシンギンスタイルとかギャップがあるとグッとくるよなーというのはある。好きな曲は”Quick Fast”

2023年6月28日水曜日

2023年6月 第3週

 今週は韓国のヒップホップレーベルAOMGがパルコ渋谷でバイナル即売会やるというので馳せ参じた。当日はGRAYのサイン会も用意されていて、混んでいるかな〜とか思っていたら想像以上で5時間近くかかって入手できました…(サインはもらえず) 薄々勘づいてはいたけど、Kpopカルチャー普及の結果、韓国ヒップホップの人気もパナい今日この頃なんですね。買ったのはGRAY”grayground.”、Code Kunst ”People”の2枚。どちらもマスターピースなので入手できて最高の気分。

犯行予告 by NORIKIYO

 NORIKIYOの10thアルバム。大麻で逮捕されて勾留時から制作が始まったアルバムということでここ数年の作品の中ではベスト。ライミングを重視して聞くタイプでは無いけど、そのレベルでも分かるライミングと意味の両立のレベルが尋常じゃ無い。主張したいことを長いライミングと共に伝える。こうやって言うと簡単なように思えるが日本語でそれを成立させるのは相当困難な中、針の穴を通すように紡いでいく言葉にクラった。色んな角度で話せるアルバムになっており、詳しい話はポッドキャスト聞いてくれ。

mind, white by Akoorum

ビートメイカーのKMが自身で買ったカセットテープの初期不良を購入店舗に訴えるストーリーをインスタで上げていてそこで知った。久しぶりにビートテープでぶち上がったかも。この手のインストアルバムはとりあえずLofiみたいなものが多い中、バラエティに富んだ構成で繰り返し聞くのに良い。好きな曲は”anicca I”

SHAM by Alive Funk

 ビートメイカーであるAlive Funkのアルバム。ファンキーなビートに韓国の多種多様な才能が結集した快作だった。こういう「ブラックミュージック」のレイドバックしたノリがアンダーグラウンドなシーンで大切にされていることに韓国のシーンの懐の深さを毎回感じる。ラッパー、シンガーともに背伸びすることなく足元のコネクションで作っていることがよく分かる人選でそれが良い。特に複数の曲で参加しているBona zoeはアップカミングで才能豊かな人だと思うし、数年で有名になるはず。好きな曲はウエストコーストバイブス満点の”Where Should I Go”

Lotto and Lotto Pt.2 by 24Flakko & Cribs

 24FlakkoというラッパーとCribsというプロデューサーによる連続EPリリース。韓国のラッパーなんだけど”Osaka”という曲は日本語でラップしていたりして面白い試み。Jin Doggを招いた曲などもあるので日本でセッションしていたのかなと思う。2枚出てるけど1枚目の方が好き。中でもunofficialboyyをfeatした ”Mr.Gang”が好きな曲。

The Omnichord Real Book by Meshell Ndegeocello

 ンデゲオチェロの最新アルバムがリリース。2018年にリリースされた”Ventriloquism”を確か粋な夜電波で知って、その衝撃が今でも忘れないレベルなので楽しみにしていた。今作は前作のようなR&B要素はほぼ皆無。ミュージシャンシップがかなり強い作品になっていてかっこよかった。どういう変化があったのかなど、このアルバムに関するインタビューがめちゃくちゃ面白い。「”即興的ブラック・アメリカン・ミュージック”とでも呼ぶべきものを私は作っているつもり。」というのが本当に言い得て妙でラフな部分もありつつ、エッセンスがギュッと凝縮されているような。18曲72分あるけどあっという間に感じた。

OPEN by Lunice

 TNGHTの片割れLuniceのソロアルバム。定点観測しているわけではないけど、ハドモ含めてたまにこういう前のめりな勢いのあるビートを聞くと世代的にはブチアガる。シンガーやラッパーを迎えている曲が多く飽きずに聞ける構成になっているのもよい。まさにタイトルどおりで開かれている。好きな曲はメロウさとLunice節がいい感じに混ざった表題曲の”OPEN”

「差別はいけない」とみんないうけれど

「差別はいけない」とみんないうけれど/ 綿野恵太

 この時代にスリリングなタイトルだなと思って読んでみた。半分タイトルは釣りのようなもので、著者自身は差別に同調するわけではなく今やすべての前提となっている「ポリティカルコレクトネス」を紐解いてくれていて勉強になった。差別に対して意見を発するときにどのポジションなのかが肝心だと分かった。

 初っ端のまえがきの中でも言及されているのだが、全体を通底するのは民主主義と自由主義の違いについて。つまりはアイデンティティ・ポリティクスとシチズンシップの違いなんだけども、この論点が超重要。読む前後で世界が違って見えるようになった。端的にいうと今までは被差別者が差別に対してNOを突きつけていたが「差別はいけない」ことだという社会全体のコンセンサスがかなり取れるようになった結果、当事者以外も含めた市民社会全体で差別へカウンターするようになってきたということ。ただ、そのシチズンシップが見据える平等というのは本当に実現可能なのか?とか差別構造と経済はどうしても切り離せないとか。個人的に嫌だなと思ったのは統治功利主義の広がりに伴って合理化が進むうちに差別が肯定されてしまう話。なんでもCPを突き詰めてもしょうもない社会しか生まれないことを再確認した。あと差別は意図的かどうか問わないという話もあり、こないだ読んだWe Act! 3 で感じた居心地の悪さは然るべき反応だったのかもしれない。その不快さについて言語化することが必要であり、自分がどういう考えなのか、そこに論理の飛躍や矛盾がないか確認するべきと書かれていて納得した。こんな感じで普段考えもしない論点ばかりで興味深かった。

 ただ正直なところ内容の半分か半分ちょいくらいしか意味が取れていない気がする。ポイントポイントでラップアップしてくれて論点を整理してくれているのだけど、固有名詞の馴染みの無さと話の難しさでなんとなく読み流していく場面も多かった。まだまだ頭を鍛えねば…

2023年6月21日水曜日

2023/06 第2週

 今週はRiverside Reading Clubのパーティーへに遊びに行った。会場のBUSHBASHがローカルに根ざした音楽の場所という感じで音がめちゃくちゃ良くて最高だった。こんな素晴らしいベニューが近くにあったらめっちゃ通っていると思う。客層もいろんな人がいて、各々が自由に過ごせる空間になっているのも居心地が良かった。そこで久しぶりに仙人掌のライブを見た。ライブの地力が本当にパないラッパーの1人で毎回見るたびに背筋がピッとなる。この日はERAもいて、ERA名義の”Passport”をやったり、韓国のシンガーであるsoguumがfeatで参加した”World Full Of Sadness(RLP REMIX)”をやったり珍しいセットリストで楽しかった。その曲の前のMCがTwitterに上がっていて現場でもグッときたのでシェア。

 夕方帯でDJもあってライブもあってみたいなクラブのようなイベントがお酒も飲めて一番楽しい。またトラスムンドが出店しており、店主の浜崎さんとJJJのラジオ特典付きでJJJのアルバムをゲットできて良かった。今回のアルバムのインタビューはまだ出ていないので貴重な話が多かった。

Stargaze by Skinny Brown

 Skinny Brownのニューアルバム。キャッチーなシンギンスタイルのイメージがあったけど、今回はちょうどいいバランスでドープかつポップなバランスで好きだった。Futureとかのアトランタスタイルのトレースといえばインスタントに思えるかもしれないが、クオリティが死ぬほど高い…Q様とパロ兄が揃い踏みしている時点でマスターピース確定案件だしSUPERBEEとの曲がスネアなしのめっちゃ攻めたオーケストラ的構成なのもアガッた。好きな曲は泣きのギターリフが最高な”Meet Me At The Lobby”

98’s UP by 98jams

 RAPSTARとなったeyden のクルー98jamsとしてのEP。KANDYTOWNもBADHOPもいなくなる中、その穴を埋めていきそうなクルー系の快作だった。正直、eyden以外のMCを個別認識できていないけど、皆ラップのスキルがめっちゃ高い。リリックの中身はeyden同じく深みはないにせよインパクトで持っていける魅力が皆にあった。あとビート選びが秀逸で、ザコいビートは1曲もないところが一番のポイントかなと個人的には感じた。今後も期待。

Next Floor by Kidney Fuji

 個人的にRAPSTAR2023で一二を争うくらいに好きだったKidney FujiのEP。やっぱり間違いない才能があるMCだと証明されているEPだった。ストレートなラップの安定感が特徴だと思っていたら、後半のシンギンスタイルがめっちゃいい。RAPSTARでサイファー突破していたらと考えさせられるレベル。もうこのレベルが当たり前でその上が必要な状況なのであれば、もう日本のヒップホップはネクストレベルへ移行したと言えると思う。

Before I Saw the Sea by Me and My Friends

 TLで見かけてジャケからして最高の気配しかなく実際聞いたらめっちゃよかった系。UKのブリストルベースのバンドでフォークというかギターベースでチェロやクラリネット、ウクレレといった変化球のサウンドも取り入れられており南米っぽい独特なムードが好きだった。こういうサウンドは朝、準備しながら聞くのに最適。好きな曲はレゲエっぽいノリのタイトル曲”Before I Saw the Sea”

6 by Kenny Mason

 前に友人に教えてもらって知ったKenny Masonのアルバム。9曲なのにディスク1、2の設定がされていて謎。それはさておき今回はサウンドがかなりバラエティ豊かでProject Patをfeatに呼んだ正統派トラップもあれば、最後の”BACK HOME”は正統派ロックサウンド、”SIDE II SIDE”は最近流行りのインディーロックスタイルなど。Wikiを見るとマイケミ、スマパン、マイブラといったロックから音楽を好きになったらしいのでベースに返っているのかも?あとソウルサンプリングの曲が多くてそこが一番好きだった。favoriteな曲は”RICH”

DETWAT by HiTech

 TLで見かけて聞いた。Omar Sのレーベルからリリースされており、3人組のデトロイトのラップクルーである。King Milo、Milf Mellyの2人がラッパーで47Chopsプロデューサーという構成。ゲットーテックなるサブジャンルのビートらしく、最近の四つ打ちな気分にフィットしつつHIPHOP的なガラの悪さが加わってめっちゃアガるアルバム。これ系で上音がミニマルなのが多いけど、メロウな上音なのも好きなポイントだった。チャリ乗ってるときによく聞いていた。好きな曲は”WHYYOUFUGGMYOPPS (feat. Link Sinatra & Ciarah)”