PATSATSHIT/DJ PATSAT |
以前から日記が話題になっていて、なかなか手に入らないなと思っていたら、神戸の1003へ行った際に本著を見つけたので読んだ。小さい文字が上から下までびっちり埋まっていて活字中毒者としてはぶち上がったし、ストリートの逸話は出身地が近いこともあり楽しんで読めた。
日付のない日記という形式のエッセイと対談の二部構成となっている。著者は東淀川にて中古自転車屋を商いつつ文章をインディペンデントな形で発表しており、その矜持が前半の日記ではたっぷりと味わえる。長いものに巻かれたがっているやつが多すぎる、それよりも自分の手の届く範囲でかませよ!といった冒頭のステイトメントからしてアツい。熱量そのままにエッセイにも強い主張や論考がたくさん詰め込まれていて興味深かった。思考を止めて流されていくのではなく世の中のムードに対して毅然とものを言っていく、その姿勢に読んでいるあいだは背筋がピッとなった。
学生の頃まで近いエリアに住んでいて、子供の頃はそれなりに色々見てきたつもりだが、大阪のローカルエリア独特のバイヴスは2024年の今でも健在のようで昔をレミニス。レゲエの兄さんと警察のエピソードはヒップホップ好きとしては捨てがたいが、個人的には自転車の鍵を何度も無くす人のエピソードがハイライト。(タイトルも最高。Stevie Wonder!)合理的に考えれば、ありえない振る舞いかもしれないけれど、これぞ人間という気がする。そんな彼に対して著者が過剰に寄り添うでもなく、突き放すでもない、絶妙な距離感で接している点が好きだった。今の時代であれば寄り添うことが100%の正解にされてしまいそうだけれど、人間の関係性は微妙なバランスで成り立っていることを思い出せてくれる。
後半は対談集で、こちらも一筋縄ではいかない曲者揃い。各人のキャラクターが濃厚に出ていてオモシロかった。世に知られてない人で、これだけオモシロい人がゴロゴロいるという点では最近のポッドキャストシーンを想起させる。表現に対する各人のスタンスが言語化されており、市井の人にとっての表現のあり方を知ることできる。特に小説という「嘘」に対する見解をあーでもない、こーでもないと捏ねるように話している点が興味深かった。日記やエッセイのような事実ベースよりも、小説の方が己が滲み出るのでは?という話は考えてもみない論点だった。
最近はZINEを作ることを考える日々なので、著者のインディペンデントに対する矜持を胸に留めつつ無理のない範囲で取り組みたい。そして著者が『呪術廻戦』を中心に近年のジャンプ漫画を激賞していたので、Kindleで積読していた『チェンソーマン』を読み始めたら超絶オモシロくて最&高。
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