まにまに/西加奈子 |
くもをさがすを読んで、他にもエッセイも出ていたなと思い出して読んだ。いろんな雑誌で連載していたコラムをまとめたものなので、トピックが多彩でオモシロかった。一気に読んだけど枕元に置いておいて一日一章読むくらいがいいかも。
前半は著者の日常生活における悲喜交々が描かれていて一章がめっちゃ短いのでサクサク読んだ。変にウケ狙いでもないし自意識炸裂している話が多いので「そう言われればそうやな〜」と思うことが多かった。小説含めて著者の特徴的なバランス感覚として自意識が強い一方でベタなことも照れずに言える強さがあり、だからこそ僕は彼女の言葉に魅了されるのだと思う。また彼女の関西弁は大阪の下町のそれであり、小中学生の頃を毎度レミニスする。実社会で接する機会は大阪に行ってもほとんどないが、本は郷愁に浸る装置でもあるのだなと気づいた。
個人的には後半の音楽、書籍の紹介がとても興味深かった。書評はよくあると思うけど、小説家が音楽を個人的な体験含めて細かく紹介してくれることなんてほとんどないので超フレッシュだった。ラッパーの田我流が紹介されているのだが腑に落ちたラインを引用。だから『B級映画のように2』は最高のアルバムなのだと思えた。
小説でも音楽でも映画でも、優れたものは、必ず「個」を描いていると思う。社会や歴史や、その他、大いなるものを結果描いていたとしても、決して一人の人間の、その「個」の感情を、おろそかにしていない。だから、全く政情が違った100年前の名作が読みつがれるのだし、思いもよらない未来に、残ってゆくのだ。人間は、これまでもこれからも、ずっと人間なのだから。
普段音楽日記を書いているが、こういうノリの音楽にまつわる文章をもっと読みたいなと思う。(最近はどう感じたかよりも音楽をラベリングするのに皆が必死だから。)そしてここで知ったDeterminationsというスカバンドが死ぬほどかっこよくてずっと聞いている。あと彼女がApple musicでセレクトした春のプレイリストも最高でBGMとしてよく流している。他のエッセイも読んでみたいと思う。
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