三人の日記 集合、解散!/植本一子 金川晋吾 滝口悠生 |
著者の3人が同じ日に日記をつけて、それらがまとまった日記本。下北沢のBONUSTRACKの即売会で買って読んだ。同じ日の別の人の日記という観点でいえばブログを並行読みしているので毎日体験している。しかし互いに近い関係の3人の同じ日というだけで、これだけ体験が違うというのは驚きだった。遠いようで近い、なんとも言えない絶妙な距離感。
三者三様に生活の機微が克明に描写されておりとてもオモシロかった。日記はどこまで書くのかが一つのキーポイントだと思うけど、本作ではその逡巡含めてかなり踏み込んで書かれている。ゆえに読んでいるときに眼前に「生活」が立ち上がってくるのが他の本では得られにくい体験なのかもしれない。SNSを中心にギスギスしているか、盛りまくりか?でリアルが見えにくい時代の中で各自が生活を営んでいることを知れる日記は一種のセラピーだと思う。
個人的にはやはり男性目線の育児日記という稀有な視点がある滝口さんの日記が一番刺さった。今絶賛慣らし保育中で慣れるまでの過程が想像以上に辛い…そんな中で保育園、子どもを育てることをめぐる具体的なアレコレが書かれていて、こういうフェーズがいずれくると思えば頑張れるかと勇気をもらえた。
植本さんの日記は過去の作品に比べると比較的穏やかな時間が流れているように感じた。日々の生活の中での思考過程がこれまでよりも表現されていて別の読み応えがあった。来月の新刊がかなり攻め込んだ内容のようなのでそちらも楽しみ。今回初めて読んだ金川さんの日記からは服装に関する自意識が刺激された。歳を取るにつれて心地よさや機能性を追求することで加速度的におじさん的な服装になりつつあるのだけど、服が持つ社会性に改めて気付かされた。
特典で3人の書き下ろし日記のおまけ冊子がついていたのだけど、これがまた本編に負けず劣らずなスペシャルな内容が書かれているので絶対に冊子付きで入手できるところで買った方がいいと思う。
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