世界は分けてもわからない/福岡伸一 |
新年1発目は積んでいた福岡伸一氏の著書。毎回恐ろしいほどの文章のうまさでビックリするけど、それに加えて本著は圧倒的な構成力も加わり、とてもオモシロかった。リリースされたのは2009年だが、このタイトルがこれほどまでに意味ありげに思えてしまうことに隔世の感あり。
12章からなるエッセイなんだけども各章につながりがある。著者がイタリアの学会へ行くところから始まり、そこからの展開が上質なノンフィクションそのもの。(実際、絵画の切断の話と別件のスペクターによるデータ改竄の話は一級品!)生物学まわりのガン細胞とES細胞、食品添加物や絵画や写真といったアートなどさまざまなテーマを取り扱いながら、それらの共通点を見出してエッセイが紡がれている。しかも内容としては難しいにも関わらず、著者の圧倒的な文章のうまさで分かりやすく噛み砕いてくれており興味深く読めた。
タイトルにある「分ける」というのは、全体から部分的に切り取ることに果たしてどれだけ意味があるのか?というテーマ。また視点に関する議論も多くマップヘイター、マップラバーというキャッチーなワードで主観と俯瞰について話していて、それも「分ける」の一種として捉えている。世界と相対するにはどちらか片方だけではなく両方大事という話は当たり前のように思えるが、生物学を通じてこの内容で著者から伝えられると納得感が違った。最近はあまりにも俯瞰の意見が多いから、主観の視点を大切にしたいと個人的に思っていたが、本著を読んで何事もバランスだなと思い直した。
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