2021年2月6日土曜日

海をあげる/上間陽子


海をあげる/上間陽子

 「裸足で逃げる」で沖縄の少女たちが生きる過酷な環境についてレポートしていた著者のエッセイ。前作よりも自分の生活/境遇について語っている内容が多く、現代の沖縄に生きることがどういう意味を持っているのかが丁寧に書かれていた。
 国道沿いに延々と基地が続いているのは、旅行へ行ったときに誰しも見ているはずだが、沖縄のパブリックなイメージはキレイな海と温暖な気候、島独自の美味しい料理などだろう。「観光業が主力産業だから当然だろう」というのは重々理解しているが、この負担の不公平性に目をつむり続けてしまっているのは日本に生きる一市民として胸が痛い。とくに辺野古への基地移転問題は合理的な理由では到底納得できないのに説明もなく進められており、市民と政治権力の非対称性が辛い。この横暴さが自分たちに振りかからない保証はなく全く他人事ではない。現にここ5年近くの政治は説明しないで進めていくことがあまりにも多く、それに対して声を上げるハンガーストライキのシーンはとても印象的だった。単純に肯定しているわけではなく、政治との距離感の話になっているところが好きだった。あと本著においては子どもの存在が非常に大きくて、彼女に説明できないことがあまりにも多い今の世の中は本当にポイズンなんだなと思わされる。選挙行ってない人はこれ読んで、このままでいいのか自分の胸に手をあてて聞いて欲しい。

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