マルジナリアでつかまえて/山本貴光 |
本の余白への書き込みをマルジナリアと呼ぶらしい。たまに古本を買うと前の持ち主の書き込みに遭遇することがあるけれど、本著はそのマルジナリアに真摯に向き合った1冊。電子書籍の普及、メルカリの台頭などで紙の本に直接何かを書き込むことはほとんどない中で、そのオモシロさがかなり伝わってきた。
著名な人の余白への書き込みがアーカイブ化されたり貴重なものとして取り扱われるカルチャーは愉快だし、本の読み方をある程度トレースできる点が興味深い。さまざまな実例が紹介されているが、翻訳家の石井桃子のマルジナリアがかなり気合い入ってて好きだった。何十版となっても毎回自ら読み直して余白に書き込みを入れて常に翻訳をアップデートし続けていたらしい。出版したら終わりではないプロフェッショナルの仕事。あと石井桃子の書斎の写真が巻頭に使われていて、それがまたいい感じで本好きはめちゃくちゃ上がると思う。(ググったら写真出てくるけど、この本の写真がベスト)
個人的な話をすると紙の本を読むときは細い付箋を気になった部分に貼るという作業をしている。(電子書籍の場合はマーカーを引いている)ただ著者は「気になった」をさらに細分化して、どういう感情なのかを記載しているらしい。そうやって自分だけの本にカスタマイズしていく作業を大きな意味のマルジナリアと捉えて、細かく記録すればするほど読書メモを書くとき楽になりそう。可能な範囲で真似できればと思う。
牽引と検索の違いの話がとても興味深かった。検索はあらかじめ何を調べるか自分で思いつかなければ使いようがない。それに対して牽引は本の内容を網羅的に把握できるツールで、リバースエンジニアリングだというのは目から鱗だった。技術書とか専門書だと牽引役立つなーと思ってたけど、著者が試したように小説で牽引を作ってみると作家のテーマや書き方が定量的に浮かび上がってくると思うので楽しそう。自分の脳みそのキャパには限界があるんでガンガン読書したことを色んな方法でアウトプットしていきたい。
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