幸福な監視国家・中国 |
闇の自己啓発にて課題図書として挙げられていた1冊。中国の監視システムとそのあり方について勉強できてオモシロかった。ファクトフルネス的なアプローチで、「中国の監視システムが人民を縛り付けているジョージ・オーウェルの「1984年」を彷彿とさせるディストピアだ!」という固定観念が柔らかく解きほぐされていく感じだった。自分の個人情報と引き換えに利便さや安心を手に入れることは日本を含み先進国では既に起こっている。(たとえば街中にある監視カメラなど)中国ではあらゆる履歴をビッグデータとして活用した、信用スコアに代表されるような情報活用が広がっている。中国では活用の程度が他国に比べて大幅に広がっているだけ。なぜそんなことになるかと言えば中国ではテクノロジーへの信頼性が高く、その理由として功利主義を挙げており、市民社会、道徳といった議論にまでリーチしている。このようなテクノロジーの背景の話が興味深かった。今のコロナ時代はまさに功利主義が重要視されるのでテクノロジーによる統治が拡張する機会なのだろう。AIが結論に至る過程がブラックボックスであるがゆえに「自発的な服従」と言われる行動を取るようになったり、そもそも社会のアーキテクチャ自体を服従させる設計にしたり。監視にとどまらず全体幸福を追い求める社会の実現はすぐそこなのかもしれない。
中盤くらいまでは中国での監視社会とテクノロジーの発展について解説してくれているものの終盤にかけては負の側面である監視による弾圧について。よくネットで話題になるウイグルの話だった。単純な暴力ではなく年密に弾圧しているところが想像の何倍もエグくて怖い。監視を通じて緩やかな罰も活用しつつ全体的には幸福で良い社会なのかもしれないが、こんな風に悪用して人を抑圧する可能性があるから人間はどこまでも信用できないなと思う。つまり人間の理性でブレーキかければいいと思ってもホロコーストと同様システム化されてしまうと止められない。単純な監視国家としての中国の状況に閉じないテクノロジーと人間のあり方を考えるにはうってつけの1冊。
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