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馬と今ここ |
植本さんの『ここは安心安全な場所』を読んで誰もが驚いたのは、あとがきの「とくさん」こと徳吉英一郎氏の文章だろう。馬との関係から派生して記名論を展開する、その筆致に只者ではない気配を感じ、石田商店で本著が売っていたので買って読んだ。本著は、ですます調なのでトーンに丸みがあるのだが、心の芯に迫ってくる内容で短いながら読み応えがあった。
本著は遠野で馬と生活する徳吉さんの馬との付き合い方ガイドだ。前半は馬と触れ合うときの具体的なアドバイスが中心で、馬という生き物の実態が丁寧に説明されている。「人間が乗ることができる哺乳類」という存在はやはり特別であり、読み進めるうちに牛や豚とは一線を画す動物だと感じた。それは、筆者が優しさと冷静さの同居する視線を馬に投げかけているからだろう。
後半は馬との関係性について深堀りしてメンタル的な点について色々と書かれているのだが、個人的にはここがハイライトだった。というのも、馬との関係について書かれているものの、もっと普遍的な人間関係や子育てといった話に置き換え可能だからだ。以下のパートは自分の育児のスタンスとして胸に刻んでおきたい。
大事なのは、馬が健やかに生きていけるように環境を整えつづけること。それから馬みずからが育っていくようなケアをしつづけること。そして、馬と人のあいだで育っていくコミュニケーションの、豊かさや多様さや深さを楽しみつづけること。そんなふうに思います。
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