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本屋さんになりたいんだけど日記/LAZY BOOKS |
万博のミャクミャクを彷彿とさせる赤と青の配色が印象的な表紙をネットで見かけて以来、ずっと気になっていた中、先日訪れたcommon houseで実物を見て即購入した。
本著は、東京都と仙台に住む男女二人(なおや氏&ゆりあ氏)が、本屋を開業するまでの過程として綴った日記である。ZINEが盛り上がっている背景には、ここ数年の「日記ブーム」の存在が大きいだろう。SNSがアテンション合戦と化す一方で、知らない人のささやかな日常を本で読む行為は、SNSとは対極にある時間の過ごし方だ。とはいえ、日記のZINEはすでに飽和状態なので、まったく知らない人の日記を読むには何らかのフックが必要である。本著の場合は二つのフックがあり、一つは本屋を経営しようとしていること、もう一つは圧倒的に凝った装丁である。
本好きであれば一度は夢想するであろう「本屋をやってみたい」という願望。しかし、今の日本で本屋を開業するのは容易なことではない。本の利益率の低さや大手ネット通販の普及といった逆風は、あちこちで語られている通りだ。本著は、そんなシビアな現実を忘れてしまいそうになるくらい、いい意味で楽観的だ。単純に本が好きで、それを生業にすれば人生がオモシロくなるという思いが先行している。当然、本屋として儲かるためのビジネススキームについて考えることは大切なことだろうが、その手前のモチベーションの高さがまっすぐ伝わってきた。何事も計画しているときが楽しいといわれるが、それが日記という形で言語化されているので、読んでいるこちらもワクワクさせられる。二人のアイデアマンとしてのセンスも光っており、とりわけ製本や装丁の部分は、自分自身がZINEづくりをする上でも大いに参考になった。
そして、本書を圧倒的にスペシャルな存在にしているのが、その装丁である。右綴じ・縦書きで、真ん中のリストページを境に上下が反転。二人それぞれの日記が前後で分割収録され、しかもスピンが二本ついていので、同じ期間の日記を二人の視点から読み比べることもできる。(私はなおや氏→ゆりあ氏の順に読んだ)。真ん中のブックリストも秀逸で、タイトルを眺めているだけでも楽しく、日記中で言及される本を辿る索引としても機能している。
正直、この装丁の魅力は言葉で説明しきれない。しかし、実物を手に取ったときの感動は唯一無二で、本が好きであればあるほど、本著は魅力的に映ることは間違いないので本好きはマストチェック。
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