2024年2月15日木曜日

人生が整うマウンティング大全

人生が整うマウンティング大全/マウンティングポリス

 友人から勧められて、そのタイトルと目次に惹かれて読んだ。自分自身が露悪的で厭世感が強い自覚はあるが本著を読むと自分なんて甘ちゃんだなと思わされた。SNSの登場により他人の発言をジャッジするように見る機会は増える中で、ここまで掘り返していく胆力は芸としか言いようがない。1周して振り切ったオモシロさがある。

 前半は具体的なマウンティング事例をタイプ別に仕分けして列挙している。Twitterのおすすめ欄で見かけそうな有象無象のゴミツイートのようなものが紹介されていて、どういったマウンティングなのかを丁寧に解説している。(実際に存在するのか、創作かは不明)著者の生息圏もしくは観察圏がエリート層だからか、お金持ちだったり、高学歴だったり、社会的ステータスの高い人たちに向かってしつこく石を投げ続けていた。日本人は舶来物に弱く島国根性ゆえのマウンティングの跋扈という話は本著に通底しているテーマであり自分自身にも見覚えがある。ゆえに何度もニヤニヤしたし、声をあげて笑ったし恥ずかしくもなった。個人的に好きだったものを引用。

「ジョン・ F・ケネディ国際空港でいつもお世話になっているレストランがなくなっていて途方にくれています」

「10年以上前にニューヨークに住んでいた頃に『上原ひろみのジャズピアノライブに行かない?』と誘われたことが何度かありました」

 こんなハイカロリーな内容で半分くらい走ったあとにネガティブに捉えられがちなマウンティングを活用する方法が紹介されたり、マウンティングにより自らを特別だと思わせる体験(本著ではマウンティングエクスペリエンスと呼ぶ)を通じて既存の企業を分析している。前者については、マウントするのではなく相手にマウントを取らせて仕事を円滑に進めるという話に大いに納得した。実際、本著で紹介されているフレーズのうち、謙遜スタイルのいくつかは仕事で使っている。これらを使うと相手にへりくだることになるのでイライラすることもあるものの、まるでクレベルのように下から三角絞めを決めて最後には勝つ=仕事を前に進めると意識するようにしている。後者については企業よりも京都のマウンティングに大阪出身者として首がもげるほど頷いた。この話をするたびに大阪サイドの思い込み扱いされるが、京都特有のマウンティングバイブスを言語化してくれていて納得した。

 他者との比較をやめる大切さはここ数年で浸透してきていると思うし、それにともなうセルフケアの大切さも重々承知している。しかし現実問題として人間は他人と比較して幸福感を感じてしまう生き物なんだから、その欲求と素直に向き合おうぜ?という論は今の時代を生き易くするもう一つの解なのかもしれない。ただこの結論に至るまでに浴びる毒性の高い例文および解説の数々が致死量を超える人も多いと思うので用量用法を守って正しくお読みください。

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