2024年1月4日木曜日

ダーリンはネトウヨ

ダーリンはネトウヨ/クー・ジャイン

 MOMENT JOONが解説を書いていると知ったこと、最近聞いている海外漫画のポッドキャストでプッシュされていたので読んだ。女性の韓国人留学生が日本の大学で過ごした様子を漫画にしたもので、タイトルのとおり当時の彼氏の言動の数々を中心にした悲喜交々な話だった。マイクロアグレッションのエピソードがたくさん入っていてマジョリティな日本人としては胸が痛かった。

 こういった差別に言及する本の場合、ゴリゴリの排外主義者を主題にして彼らの異常な言動を取り上げたものはよく見かける。本著はそれと真逆で、著者と付き合っている彼氏が著者に対して差別的な言動を繰り返していたという話。つまり敵意丸出しというよりも愛情に包まれた哀情といえばいいのか、複雑な構造の感情が描かれている。正直、彼氏に対してはそこらの排外主義者よりもタチの悪さを感じた。(排外主義うんぬんよりも彼氏自身のクリーピーさもあると思うが)排外主義者は自身の攻撃性に自覚的だが、マイクロアグレッションしている側はこんなに無自覚なのかと。こうやって他人を責めるのは簡単なのだが、それは読者に対してブーメランのように迫ってくる。一番顕著な例は「日本語が上手ですね」というフレーズ。日本語を話せる海外からきた旅行者や留学生に言ったことがない日本人の方が少ないと思う。実際、MOMENTも同様の主張を随分昔からしていたけど当時は何が問題なのか理解できていなかった。本著ではそれについて明快に解説されている。このエピソードに象徴されるように、そして「外」国人という言葉が示すように日本人とその他というライン引きが色んな場面で行われていることに気づかされた。加えて留学生に限らない日本社会に蔓延る「普通」との戦いが大学、就活などのエピソードからビシバシ伝わってきた。社会制度や共通認識を今すぐ変えるのが難しいとしても個人の態度や考えは今すぐにでも改めることができる。それはMOMENTが解説しているとおりの「成長」なくしてあり得ない。自身の認識に対するリトマス紙のような働きをする漫画だと思うので、たくさん読まれてほしい。

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