ダンス・ダンス・ダンス/村上春樹 |
これまで読んでこなかった村上春樹をたまに読んでおり、その流れで読んだ。タイトルと装丁から気になっていた1冊。なんとなくリアリストだと思っていたけど、本著は長尺ということもあり色んな要素がてんこ盛りで楽しかった。
34歳の男が主人公で彼の周りで起こる奇妙な出来事をメインに話が進んでいく。いつもどおりスノッブな感じでそこはブレないのだけども、羊男をめぐるファンタジー要素や人が死にまくるサスペンス要素が加わることで物語に幅が出て比較的親しみを持ちやすかった。見ず知らずの13歳の女の子と友達関係になる34歳はちょっとキモいなと思うけど、著者の文体とキャラ設定で不思議とバディ感のあるものとして読めた。互いに種類の違う孤独を抱えていて、それを埋め合う様が擬似親子でもあり擬似カップルでもある。主人公が子どもに諭す形で人生に対するアプローチの話が展開するので、そこは興味深かった。孤独に苛まれている時期に読むとめちゃくちゃ刺さると思う。
今まで春樹と龍で比較されるのがよく分からなかったけど、本著を読むとプロットの材料が龍と似ている。ただアウトプットは再生と破壊くらいベクトルとしては真逆であり各人のオモシロさがあることにやっと気づけたかも。春樹の淡みの良さを理解できるようになったというか。
厭世的なふるまいを繰り返しながらも踊るしかないという、タイトルにある「ダンス」のメタファーがオモシロい。自由に踊るというよりも決まった振り付けを踊るダンスを意味しており、つまり決まったルーティンをこなしていければ事態はなるようになるだろうということ。全体に主人公が受動的なのが特徴的だと思う。物語の婉曲的な雰囲気が海外の人にとっての日本人のイメージに当てはまるから海外で人気なのかなと邪推した。(そもそも相対的に見れば日本人は実際に婉曲的なのだろうけど)村上春樹を読んで毎回感じる高いリーダビリティは読書の楽しさを思い出させてくれるのでこれからも定期的に読みたい。
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