レイシズム/ルース・ベネディクト |
以前から気になっておりKindleでセールになっていたので読んだ。1940年に発行された本著をが新訳で読みやすく2020年に再刊されたそう。WW2の最中にリリースされたことに驚きを感じつつも、ナチスの台頭を牽制しているあたりに当時の空気を感じてレイシズムの理解が深まるのは当然のこと、一つの記録としても楽しめた。こうやって歴史に点を打つ意味での本の重要さも改めて感じた。
読んで一番驚いたのは今でも全然通用する話ばかりだということ。人間の思考パターンとして仕方ないのか、それとも進化、適応できていないのか。レイシストが歴史修正主義者であり、レイシズムが恣意的に生まれた思想であることを丁寧に説明してくれている。アーリア人をめぐる言説の数々や頭のサイズによる差別などぼんやり知っていたことが明確になった。今となっては鼻で笑うレベルの学問かもしれないが、頭の形と優秀さの相関を真剣に追い求めていた時代があるのだから怖い。人種で何かが決まることはなく、あくまで受け継いできた環境・文化がすべてだと繰り返し主張しているし、人種が混じり合うことは歴史を通じて起きてきたことであり、その中で文明は進歩し続けているという話に納得した。
レイシズムが初めは宗教を対象にしていたが、各国の統治形態の変化と共に人種へと変化していった話も興味深かった。そもそも国家間の戦略戦争がなければレイシズムは産まれなかったのでは?とか国家規模になるとレイシズムは科学的客観性を装うこともしないとか。結局科学的な論拠はなく、すべては人間による政治の道具でしかないことがよく分かった。以下のラインは戒めとして胸に刻んでおきたい。
私たちが傲慢無知であったり、あるいは恐慌に煽られて平常心を失うとき、分かりやすくて耳に心地よい物語がそっと忍び入る。自暴自棄になったとき、私たちは誰かを攻撃することによって自分を慰める。
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