2023年3月1日水曜日

継続するコツ

 

継続するコツ/坂口恭平

 本屋で見かけて気になったので読んだ。キャリア初期の作品は結構読んでいたものの最近の作品は読めていなかった。久しぶりに読んでもあいかわらずエネルギッシュで元気が出る内容でアガった。著者が毎回提示するユニークな観点は本著でも健在でそれがすべてだと思う。

 タイトルからして、どうやって継続していくかのノウハウ本だと思われるかもしれない。実際、実体験に基づいてどのようなマインドセットや環境を用意した方がいいかを説明してくれる。著者の場合は本を書く、絵を描く、音楽を作ることの3つの継続を意識していて、特に本と絵についてスコープを当てている。「継続するには好きであることが最重要だ」という話なので、ノウハウというより思想に近い部分の話が大半だった。好きなことを続けるのにエネルギーは不要だが、嫌なことを続けることにはエネルギーが必要であり、むしろネガティヴな影響を与えるからやめたほうがいいというのはド正論だった。「そんな綺麗事聞かされても生きていくためには好きなことだけでは生きていけないんだから」という否定に対して、こんな否定されて生きにくい社会に迎合していいのか?と発破もかけられて卑屈になりがちな自分を反省した。

 ポッドキャストやったりこうやってブログ書いたりすることはほとんどお金に結びついていないからコストパフォーマンス時代の今では無意味に思う人も多いかもしれない。しかし著者はそういった軸で何かに取り組むこと自体に疑義を呈しており他人と比較したり目先のお金のことを考えるのではなく、とにかく自分が好きで継続できるかどうかを考えよと繰り返し説いていた。そしてそれこそが幸福なのであるという、幸福論にまでリーチしている点が本著がユニークなところ。しかもそこにはほとんどロジックはなく、著者のノリ、バイブスに巻き込まれる形で延々と話を聞いていると、いつのまにか幸福論になっている点がオモシロかった。盲目に彼の意見を全部信じようとは思えないけど、やっぱり実際に実現していてなおかつ声高に自分を肯定していく存在は社会にとって必要。自分は性格的にすぐに否定から入ってしまうので、ポジティブなバイブスで好きなことを継続していきたいと思えた1冊だった。最後にパンチラインを引用しておく。

笛を使って、人をコントロールするのとか嫌じゃないですか。それよりもサックスを吹きまくって、意味もないのに聴いている人が自然と体を揺らすほうが気持ち良いじゃないですか。あんな感じです。

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