「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認/佐々木チワワ |
強烈なタイトルに惹かれて読んだ。30歳半ばで自分はもう若くなくて完全におじさんになったのだなと実感させてくれる1冊でかなり興味深かった。それほどに知らない世界の連続で今の若者の生きにくさの一端を垣間見た気がする。そして、それは彼ら彼女らの世代の性質ではなく、今の社会が生み出していて自分も無縁ではないと感じた。
タイトルにある「ぴえん」は絵文字が起源であり元々は「Pleading face(懇願する顔)」だが、ぴえんの意味が曖昧になり汎用的に使われているらしい。(あの絵文字は2018年から登場したものらしい…もっと前からあるように思っていた)「ぴえん」に限らず知らない日本語のスラングがてんこ盛りでそれだけでも読んだ価値あるなと思うくらいに楽しい。その「ぴえん」から滲み出る若者たちのgood die youngな価値観は興味深くもありつつ、その希死願望を抱くような社会を構成する大人側としては胸が苦しくなること多かった。
歌舞伎町が新宿東宝ビルを中心にジェントリフィケーションされたにもかかわらず、想像もしていない角度でアンダーグラウンド化して未成年の溜まり場としての「トー横キッズ」が誕生する流れは全く知らないことで驚いた。自分が知っている(もしくは知りたい)ことだけで世界が構成される蛸壺化は進んでいると思っているので、こういうときに読書のありがたみを感じる。
ホストカルチャーにかなりのページが割かれている。ザ・ノンフィクションで見ていたホスト社会で印象が止まっていたけど、著者の丹念な取材成果から見える世界は全く別物になっていて勉強になった。さまざまな取材ルポのあとの最終章で若者だけの話ではない論点(「まなざし」と「SNS洗脳」)が提示される。自分とは関係ない世界だとラインを引くのは簡単だけど、SNSをはじめとしてすべてが数値化されていくグローバル社会において人間が数字に加速度的に依存する、その最先端がホストなのだという論考はめちゃくちゃオモシロかった。著者が現役大学生でホストに通った経験を持つ方である点も本著の「ガチっぷり」に寄与していると思う。おじさんライターが入り込めないところまで入り込んで言語化してくれるのは代弁者としてこれ以上相応しい人はいないはず。本著は新書であり入門編だと思うので、より専門的な定量調査なども含めた書籍を読みたい。
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