ケンドリック・ラマー: 世界が熱狂する、ヒップホップの到達点 |
伝記本を読んでケンドリックのことを知りたいバイブスが高まったので読んだ。ケンドリック読本というよりもケンドリックを踏まえてラッパーや批評家の各人が何を考えているか?がまとまっている1冊で伝記とは別角度で勉強になってオモシロかった。特にヒップホップライターではない方の寄稿が全然別角度からの考察でかなり刺激的だった。長澤唯史氏は「内省」をテーマにアメリカ文学を引きながらケンドリックについて語っているし、山下壮起氏はキリスト教の観点からケンドリックのラップのあり方、ひいてはギャングスタとキリストの共通点という大胆な見立ては読み応えがあった。
日本のヒップホップ好きとしてはラッパー8人がそれぞれケンドリックに関する所感を語りながら彼らのラッパーとしてのアティチュードを話している点がめちゃくちゃ興味深かった。ケンドリックのフッドを大事にする姿勢に共感するラッパーもいれば、ルーツの話は日本でほとんどされていないのでは?という指摘もあったり。自分の主張を織り交ぜた音楽は日本では受け入れられにくいという話もあったり。「ラップ」ではなく「ヒップホップ」を体現しようとしている姿勢を感じるラッパーの人選になっている。ただ一方で日本のヒップホップにおいてアルバムが出たときに賛否含めて議論できる土台がなさすぎるなと一方で感じた。ケンドリックの各アルバムはそれぞれがヒップホップの歴史における金字塔なので特別なのは当然だとしても、こういうナラティブを語る作品に対する受け身の取り方を自分含めてリスナー側が鍛えとく必要があるなーと感じた。ケンドリックのエナジーが日本でも伝播でして素晴らしいアルバムが出ることを願ってやまない。
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