酒寄さんのぼる塾日記/酒寄希望 |
又吉氏のツイートで知り、前から気になっていた芸人だったので読んだ。新しいスタイルの芸人エッセイでめちゃくちゃオモシロかった。ぼる塾というユニット自体がこれまでの女性芸人の枠では語りきれなくて何故これだけ人気があるのか、その片鱗を少し理解できた気がする。
このエッセイが画期的なのは当事者語りではない点。現在育休中で第4のぼる塾のメンバーである著者が見たり聞いたりした残り3人のエピソードがほとんど。(著者のエピソードも後半に収録されているが)これだけSNS含めた自分語りの時代において身近な人のオモシロい様子をつぶさに観察して表現している。そこにお笑い芸人のエピソード特有の打算性がないところが好きだった。すべらない話が産んだエピソードトークのフリオチカルチャーに対して鮮やかにカウンターを決めていて、その点ではハライチ岩井氏のエッセイと同じ方向だと思う。つまり派手なことはなくても日常生活にオモシロいことが多分にあるということを教えてくれる。
とは言ったものの、やはり、ぼる塾のメンバーは皆それぞれの着眼点があって、それが最大の魅力だと思う。本著では各メンバーごとにチャプター分けされていて、それが読みやすいしキャラクター把握しやすくて良かった。なんてことないエピソードを読者に報告する文体で書かれているので、カフェで友人から話を聞いているような感覚になる。特に田辺さんのご飯に関するエピソードはどれもオモシロくて、本当に食べることが大好きで食事に対する惜しみない愛が伝わってきた。こんなに本を読んでいて癒されることもなかなかない。
終盤は著者の自分語りになり、ぼる塾の結成秘話や育休にまつわるエピソード、自らが不在の状況で売れてしまった現在の葛藤など、赤裸々に語っている点も興味深かった。今でも十分オモシロいけど4人になった完全形態を見れる日を心待ちにしている。
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