2015年2月24日火曜日

松ケ根乱射事件



山下敦弘監督作品。
今年中に彼のフィルモグラフィーを
全部見たいなーと思いつつ鑑賞しました。
順番でいうとリンダリンダリンダのあとになるんですが、
初期作品に近いオフビートなタッチが印象的でした。
地方都市閉塞ものとしてオモシロかったですね。
主人公は新井博文演じる警官で、
彼の周りでろくでもないことばかり起こるという話。
彼の双子の兄がひき逃げを起こしてしまい、
その轢き逃げしてしまった人にユスられたり。
父親が近所の理髪店の娘さんを妊娠させたり。
彼は家族の中で警官という職業もあいまって、
責任感が強く、家族を引き受ける存在な訳です。
でも物語が進むにつれて、少しずつおかしくなっていって、
それに耐えきれなくなる様が見所だと思います。
個人的には三浦友和のどうしようもない父親像が好きでした。
ロクデナシしか出てこないけれど、
人間ってこんなもんだよねという厭世観に浸るのも映画です。


ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式


うるせ〜!!って言いたくなる邦題ですが、
各所で好評価なので見てみました。
邦題でご丁寧に説明していただいている通り、
超仲のいい男女関係の友達と恋人の違いについて、
男女4人の関係を通じて浮き彫りにしている作品。
恋人同士のダブルデートから始まるんですが、
客観的に見ると恋人同士を入れ替えた方が
うまくいくんじゃないかな〜と思える。
でも、男女関係は似た者同士だから
上手くいくとは限らないんですよという提示と、
それでもお互いをrespectできる関係がないと成立しない
という両方の考え方を同時に見せてくれるのが
オモシロいなーと思いました。
しかもIMDb読んでたら、基本設定は決まってるけど、
全部アドリブというのが衝撃でした…
でもそれゆえに自然な感じになってるのかなーとも。
好きなシーンがアナ・ケンドリックと
ロン・リヴィングストンが一線を越える瞬間。
引きのワンショットで男女の微妙な距離感を捉えています。
あとオリビア・ワイルドのワイルドさ。笑
寂しがりやのb*tch気質な訳ですが、
「私は悪くないんだから、罪悪感抱かせないで!」
というセリフにグッときました。
楽しそうにお酒飲んでるの見るだけでも超楽しいので、
ビール片手に飲むのがオススメです!

2015年2月22日日曜日

アメリカン・スナイパー



クリント・イーストウッド監督最新作。
前作のジャージーボーイズから、
このスパンでの最新作公開というそのエネルギーに
マキシマムリスペクトですよね、ホント。
イラクで指名手配されるぐらい大量に人を殺した、
実在の伝説のスナイパーが題材といことで
期待して公開初日に見てきました。
どちらが正しい/悪いの安易な二元論を提示しないのは
勿論のこと「やらなきゃやられる」状況に置かれた人間同士が、
戦争で殺し合う姿を見ていると、とても哀しくなりました。
でも「やらなきゃやられる」という無限ループ。
キャサリン・ビグローが近年描いてきた
ドラッグとしての「戦争」にもフォーカス。
折り合いをつけて生きていくことができればいいけど、
こんなことになるなら初めから戦争なんて無ければいいのに
と心の底から思いました。
冒頭は予告編でも使われていた1回目の派遣での戦闘シーン。
グレネードを持った子どもが出てきて、
撃つ/撃たないで異常なまでにテンションが張りつめて、
主人公の幼少期へシーンが変わる。
主人公のスナイパーを演じるのはブラッドリー・クーパー
(実際の人物と劇似!)
幼少期から彼が軍隊に入るまでの過程を描いていきます。
出身はテキサスで兄弟2人でカウボーイを稼業としていたけど、
アフリカ諸国での大使館テロのニュースを見て、
30歳でSEALSへ入隊する。
訓練シーンも描かれるんですがフルメタルジャケットばり。
白人、黒人の教官が人種差別発言しまくりなのが興味深かった。
訓練を耐え抜きSEALSへ入隊したところで911が勃発。
そしてイラクでの最初のシーンへと戻っていきます。
ここで子ども、女性を容赦なく殺すところで、
本作がヌルいものではないことがビシビシ伝わってくる。
この1回目の派遣のタイミングで奥さんは妊婦。
幸せかのように見えたけど、
次の派遣で宿敵となるスナイパーが登場。
シリア人のオリンピックメダリストの凄腕で、
2人の殺し合いが本作のメインといってもいいでしょう。
狙撃って単なる打ち合いじゃなくて、着弾自体が
「お前を見ているぞ」というメッセージとなるんですよねー
とくにアメリカ軍が襲撃されて、ミラーでスナイパーを見てたら、
それが狙撃されるシーンがオモシロかったです。
バイオレンス描写が相当攻めていて、
前述した子ども狙撃は序の口で、本作を見た誰もが忘れられない、
ドリルによる報復シーン。
近年見たバイオレンスシーンでも屈指の残酷さ。
戦争が起これば、子どもだって死んでいるに決まっているし、
頭で理解しているけれど、画で見せられると相当キツい。。。
後半は戦争中毒にまつわる話へシフトしていきます。
最後のイラク派遣前に奥さんから行くのを止められるんですが、
このシーンが戦争へ志願する人の思考回路なのか…
と納得しつつも、ヤダなーと思いました。
(アメリカが攻撃されたら家族が死ぬ。
ゆえに家族を守るためにイラクへ行く)
そんな彼が除隊することを決める戦闘シーンは
本作でも最大の見所だと思います。
ローンサバイバーばりの圧倒的不利な状況に加えて、
砂嵐で何も見えなくなる中での逃走。
生き地獄とはこのことかと…
帰って来てからはPTSD気味になりつつも、
何とか平穏な心を取り戻した彼に待つ悲劇。
なんて日だ!と冗談抜きで使いたくなりました。
戦争映画のマスターピースとして
語られていくことかと思いますので、
是非劇場で見ておくべきだと思います!

フォックスキャッチャー



スティーブ・カレル×チャニング・テイタム×マーク・ラファロ
というメンツでレスリングの映画と聞いて見てきました。
実は1度見た際に劇的に体調が悪くて、
ほとんど寝てしまうという最悪な事態となってしまったので、
2回目をキメてきた次第です…
結果として2回見て良かったと思えるくらい好きな作品でした。
監督はベネット・ミラーで前作のマネーボールを
見れていないので早く見ようと思います。
女性はほとんど出てこなくて、3人の男たちによる、
ラブストーリーさながらの関係性のバランス変化が
見ていてとても楽しかったです。
自分では何もできないくせに己のプライドを大切にし、
名誉だけを求めるクズ野郎がいかにクソかってことが、
丁寧に描かれていて、お飾り上司たちに煎じて
吐くまで飲ませてやりたい!と心の底から思いました。
実話ベースの話で、チャニング・テイタム演じるマークと、
マーク・ラファロ演じるデイブは兄弟2人して、
レスリングの五輪ゴールドメダリスト。
スティーブ・カレル演じるデュポンが
レスリングチームを発足し、そこへマークを招集する。
アメリカを代表するチームを作ろうとするものの…という話。
冒頭、白黒の昔のデュポン家の映像、タイトルから始まり、
マークが人形相手に黙々とスパーしているシーンへ。
彼の生活が上手くいっていないことを説明ではなく、
小学校での講演、食事、デイブとのスパーで
描いていくのは素晴らしいなーと思いました。
デュポンがTELしてきて、彼の豪邸を訪問し、
マークはデュポンに付いていくことにする。
このデュポンの異形感をスクリーンで見るだけでも、
本作の価値があるくらい。
笑い方、歩き方など、どれを見てても狂気を感じる。
Foxcatcher所属となったマークは世界大会で優勝。
この打ち上げシーンが最高で、
David BowieのFameがかかる中、祝杯を挙げていたら、
デュポンがレスリングに対する思いを述べて、
皆とレスリングでじゃれ合う。
ここでデュポンが裸の王様であることが示され、
なおかつマザーコンプレックスを抱え、
母親からの承認を強烈に求めていることが分かる。
裸の王様はうまくいっているときはいいんだけど、
これが徐々に崩壊していきます。
優勝したことで2人の距離は縮まり、
コカイン一緒にキメたりするような関係に。
練習もロクにしないで怠けているときに
デュポンが母親にレスリングをバカにされ激昂し、
さぼっているマークをどつき、Ape呼ばわり。
兄のデイブを何としてでも招集することにする。
ここで明らかになるのはマークが、
兄無しでは何もできないことを認めたくないということ。
(この点で考えるとマークとデュポンは似た者同士)
デイブがFoxcatcherに加入し、コーチ経験もある彼は、
チームにとってなくてはならない存在へ。
マークはその指導に逆らい、独力でなんとかしようとする。
そしてデュポンは、本当のコーチが登場したことにより、
お金だけ持っている裸の王様でしかないことが露になってくる。
この辺りの微妙なパワーバランスの変化を
丁寧な描写の連続で描いてくのが好きでしたねー
何気ない行動の一つ一つが崩壊への序章となる訳です。
それに説得力を持たせているのが、
各俳優それぞれの演技にあるのは言うまでもありません。
テイタムは自意識こじらせ系ゴリラという
新たな側面を見せてくれたのが素晴らしかった!
とくにオリンピック予選で負けてしまってからの
ホテルの部屋で暴れ倒し、食い倒すシーンは最高最高!
鏡を頭突きで割るんですが、
それまでの鏡を前にした彼の言動がフリになっていて、
最もエスカレートした瞬間に頭突き!っていうね〜
IMDbによると脚本に無かったっていうんだから凄い)
そしてラファロは2人のコンプレックス野郎を
受け止める寛容ゴリラをカラダ張って体現。
(最初にテイタムとスパーするシーンは最たる例)
勿論カレルはこれまでの3枚面のキャリアを
すべて覆すレベルの怪演!
僕が好きだったのは母親が練習を見にきた瞬間に
コーチづらして指導を始めるところ。
なんて滑稽でクソなんだ!と。
お飾りの裸の王様であることに最終的に気付いた彼が取る、
最悪のエンディング…
男同士のジェラスがときに
女性同士のジェラスを超越する瞬間が克明に刻まれています。
マネーボールも早々に見たいと思います!

2015年2月21日土曜日

きっと星のせいじゃない。



(500)日のサマーの脚本コンビが脚本を担当している
ということで見てきました。
(サマーも改めて見たけど最高最高やな!)
予告編を見たときには難病ものかーと眉をひそめていましたが、
過去の難病ものに対して批評的なスタンスを持ちつつ、
甘酸っぱい青春の1ページを切り取り、
なおかつ「死」の掘り下げ方も深いという
奇跡的なバランスの作品になっていて素晴らしかったです。
ティーンエイジャーが限られた時間を精一杯生きる姿を
見せつけられると、のんべんだらりと生きている
僕みたいなおじさんは考えさせられることが多々あり。
主人公はヘイゼルというガンにかかっている少女。
甲状腺ガンを発病し、肺に転移したことから、
酸素ボンベが欠かせない。
そんな退屈な日常を過ごしていた彼女が出会った
オーガスタスという男子と恋に落ちて…という話。
冒頭、彼女のナレーションから始まるんですが、
ここでfictionでありがちな美女が不治の病にかかり…
というのはあくまでfictionでしかなく、
実際は病院と退屈な家との往復でしかないということを
ガツーン!と決めてくるところで予告編での心配はすべて解消。
そして本作では恋に落ちる相手も
かつて深刻な病気だったという過去を持つのもポイント。
オーガスタスは骨肉腫で右足の膝下を切除しています。
ヘイゼルがある種悟りきった死生観を持っているのに対して、
彼はユーモアの人でポジティブさを持つ。
そんな彼にヘイゼルは徐々に惹かれていきます。
(最初に出会うシーンでのタバコのくだりは、
喫煙者には辛いヘイゼルの論説…)
前半は病気を持つ彼女と治った彼との関係が
構築されていく様子が描かれていきます。
この2人の距離を縮めるのが1冊の本っいうところが
本好きにとっては最高に愛おしい。
「大いなる痛み」という本なんですが、
唐突なそのエンディングを巡って2人で盛り上がる。
その本を読んでいるあいだ、オーガスタスは
ヘイゼルに返信しないものだから、
彼女は肌身離さず携帯を持って常にメールをチェックしてるが、
かわいらしかったですねー
さらにオーガスタスが気を利かせて本の筆者とコンタクト。
その筆者からオランダで会う旨の約束を取り付ける。
2人はこのまま上手くいくかと思いきや、
彼女の病気が再発し、入院してしまう。
ヘイゼルは彼を傷つけたくない一心で距離を置くようになる。
しかし、皆の尽力によりオランダ行きが実現。
2人は再度距離を縮めていきます。
初日に2人でドレスアップしてディナーに行くんですが、
そのシーンの多幸感たるや…
翌日はついに憧れの筆者との対面。
物語の続きを聞こうと楽しみにしていたら、
屁理屈コネ倒すアル中のオジさんで最悪の対応を受けてしまう。
この作家役をウィレム・デフォーが演じているんですが、
超最悪で最高なんですよねー
いきなるスウェーデンのいなたいヒップホップを爆音でかけたり、
「病気をダシに社会の恩恵を受けてのさばりやがって!」
とか身もふたもないことを言ってしまう。
最悪の思い出になりかけたところを救うのが、
アンネ・フランクの家。
他人のことを配慮して自らの思いを押し殺してはならない
というメッセージに勇気づけられ、
ヘイゼルとオーガスタスはここで初めてキスをする。
見ている間、全然キスしないなーと思っていたら、
このシーンに向けたタメだったのか!と納得。
2人の純粋な気持ちが結実するイイシーンだったと思います。
最高の旅行のまま終わるかと思いきや、
オーガスタスから衝撃の告白が。
ここから立場が一気に逆転してしまうのが
Freshだなと思いつつも、めっちゃ辛い気持ちになりました。
特にガソリンスタンドからオーガスタスがTELしてくるシーン。
ユーモアの人でいつも気丈に振る舞っていた彼が
死を目前にして恐れる姿が胸が締め付けられました。
(傑作エンディングノートでも提示されていた点)
僕が泣いたのは生前葬を
オーガスタスと彼の友人、へイゼルで行うシーン。
全盲の友人の弔辞で号泣メーン!
さらに死ぬ直前に2人でピクニックで交わされる、
誰かの記憶に残ることに関する話で、
多くの人の思い出に残るよりかは
1人に一生忘れないでいてもらうことが大切なのでは?
というねーその通りだなぁと納得。
そして実際の葬式でヘイゼルの取る選択も
葬式論として溜飲を下げました。
想定外に翻弄される斜め上の良さがあるので、
是非見て欲しいところでございます。

2015年2月18日水曜日

味園ユニバース



山下敦弘監督最新作ということで見てきました。
まだまだフィルモグラフィーは全部見切れていませんが、
少しずつ見進めています。
山下監督といえば現在放映している、
山田孝之主演のモキュメンタリー
「東京都北区赤羽」も抜群にオモシロいので
まだ見られていない方は是非に。
肝心の本作はというと、僕が大阪出身で
これを東京で見ると郷愁を覚えざるを得ない。
しかも、舞台が味園ユニバースで、
ユニバース自体は1回ぐらいしか行ったことがないけど、
味園ビルによく行っていた時期がありました。
その頃とかも思い出したりしちゃって、
少しおセンチな気持ちになったりね〜
関ジャニ∞の渋谷すばる演じる茂雄(a.k.a ポチ夫)が
刑務所から出所したところを何者かに襲われて記憶喪失に。
そんな彼をライブスタジオを経営しつつ、
赤犬のマネージャー兼PAのカスミが引き取ります。
(カスミを演じるのは二階堂ふみ)
共同生活が始まると同時に、
茂雄を赤犬のボーカルに据えようとするものの…っていう話。
冒頭、出所のシーンから始まるんですが、
背後からのワンショットでぐーっと見せてくれるし、
壁が異様に大きくてアメリカの刑務所みたいなのも
アガるなーと思いながら見ていました。
明らかにカタギではない人(天竺鼠!)に出迎えられ、
帰路につくものの襲われて記憶喪失。
公園で寝てたところ、赤犬のライブに引き寄せられて、
おもむろにマイクを取り歌い出す…
正直、関ジャニ∞の渋谷すばるが主演ってことで
なめてる人が多いと思うんですよ。
僕も果たしてどのレベルで歌の映画やるつもりやねんと。
そんな舐め腐ったクソ野郎どもに
冷水を浴びせかけるかの如く、
渋谷すばるの歌い出しの素晴らしさがハンパない!
歌うのは和田アキ子の「古い日記」
「あの頃はっ!」のソウルフルでブルージーなシャウトを
アカペラで披露するんですが、
僕はここで完全に心を鷲掴みにされると同時に、
舐めてて本当にすみません!と心の底から思いました。
そして歌だけに限らず、
大阪のガラの悪いゴロツキをきっちり演じているのが、
およそジャニーズとは思えなくて最高!
ガンガンどつかれるし、どつき倒す。
不器用な生き方しかできないブルースを
文字通り体現しているのが良かったなーと思います。
前半は記憶を喪失した人として、
割とファンシーな感じで演技しているので、
その対比で余計に後半のガラの悪さが際立つ作り。
二階堂ふみは大阪弁どうなんかな〜と思っていましたが、
違和感が一切なくて、どの作品見てもこの人が出ていると、
きっちり映画が成立するという意味で素晴らしいなと改めて。
彼女が劇中で何度も放つ「しょーもな」というセリフは
クライマックスで意味を持って結実するのが好きでした。
茂雄とカスミの掛け合いも面白くて、
恋愛関係にはならないパートナーということに好感を持ちました。
2人での共同生活の丁寧に暮らしている様子が印象的で、
とくに朝ご飯がめちゃくちゃ美味しそうなんですよね。
マイメンのMatsumaeとも以前話していたんですが、
ご飯をむしゃむしゃ食べるシーンって非常に重要で、
それだけで 映画が持つ説得力が増すんですよね。
あと家の縁側でスイカの種を飛ばすワンカットのシーンは、
めちゃくちゃ叙情的で最高最高でした!
後半にかけては茂雄の過去が明らかになりつつ、
彼自身の記憶も戻ってくる。
その過去についても説明を比較的省略していて、
あくまで文脈の中でしか語られない。
この辺もワビサビ効いてて好きでした。
茂雄の父親との関係を繋ぐのが歌であり、
それが和田アキ子の「古い日記」な訳です。
しかもテープで…っていうところもイイ!
でも、茂雄は自分の気持ちに正直になれず、
本当は歌いたいんだけど悪の道を再び歩み始めてしまう。
自分にとって意味のないことだとしても、
他者にとっては意味があることもある、
というテーマは良かったんだけど、
終盤の脚本の甘さは気になりました。
(茂雄がステージに立つと決心するロジック)
ラストに歌う曲は確かに多幸感があって悪くないんだけど、
関ジャニ∞の曲の延長でしかないというか…
せっかくソウルフルな歌声を持っているのに、
もったいないなーと思いました。
魅力的な瞬間が多いので、是非映画館で!

2015年2月15日日曜日

ラブストーリーズ エリナーの愛情(Her) / コナーの涙(Him)


予告編を見たときに1つのラブストーリーズを
男/女の視点の両方から描いた2本立てという宣伝に
惹かれて2作連続で見てきました。(100分+95分)
1本目を見終わった後に、
話の中身を全部知っている状態から
2本目を見る訳で果たしてどうなんかなーと思っていたら、
これがとんでもなくオモシロかった!
こんなに多層的なラブストーリーは見たことがありません。
1本目にどちらの作品を見るかによっても
全く印象が異なるような作りになっています。
2本目を見始めたときに、
「そのとき彼/彼女は実は…」とかすれ違いを描くのまでは
想像がついたけれど、2人で共有している思い出を
男視点と女視点で微妙に異なる内容になっているのが、
映画のテーマともバッチリ合っていて深いな〜と。
ゴーン・ガールでも描かれていましたが、
他者が何を考えているか、感じているかなんて分からない。
ゆえに他者を最大限尊重し、想像力を働かせなければならない。
夫婦という最小単位の社会ではより大切になってきますが、
最近のイヤな世間の空気を考えると、
普遍的に考えなければならない話だと思います。
これはOnce Againものでもあり、
如何に喪失から再生していくかが男女で異なるのも
グッとくるポイントでした。
あと苦難が訪れたときに2人で力を合わせて乗り越えよう!
みたいな方法ではなく、距離を取って、
問題を解決しようとする姿勢が極めてリアリスティックで
そこも好感を持ちました。(しかもラブストーリーで)

原題はThe Disappearance of Eleanor Rigby。
女性の主人公名がEleanor Rigbyで、
これはThe Beatlesの曲名です。
その曲中の
というリリックから本作を着想したとのこと。
男サイドの副題がHim、女サイドがHerとなります。
ちなみに僕はHer→Himの順番で見ました。
僕自身が男ということもあるのか、見た順番なのか、
Himサイドの方が好きでした。
お話としては単純で、ある夫婦には子どもがいたんだけど、
その子どもが亡くなってしまったことで2人は別居。
子どもの死から2人が再生していく過程を
男女の視点で分けて2本の映画で描いた作品。
それぞれの物語の始まり方からして、
2人の世界の捉え方の違いがよく分かる。
Herの方はジェシカ・サスティン演じるエリナーが、
ヤク中か!というレベルの顔色が悪い状態で、
橋の上を自転車で走るショットから始まり、
橋の上から身を投げて自殺未遂を起こしてしまう。
一方でHimの方は2人で食い逃げしーの、
公園でイチャイチャという極上甘酸シーンから始まります。
(コナーはジェームズ・マカヴォイが演じています)
過去を捨て、イチからやり直そうとするエリナーと
過去を受け止めながら何とかもう一度やり直そうとするコナー
この冒頭だけでも2人のスタンスの違いが
よく分かる作りになっているし、
上記シーンが互いの作品でどのような使われ方をしているか、
それ自体も意味を持ってくる。
エリナーは大学教授の父のコネもあり、大学で授業を受け始めます。
コナーは自らの経営するレストランの運営が上手くいかない中でも
エリナーの行方を探そうと画策する。
これらの通常のラブストーリーなら何気ないシーンにも関わらず、
追う/追われるの構造を持ち込むだけで、
そのシーンが持つ意味が多様化していくのは興味深かったです。
2人とも別居のため実家に帰るんだけど、
家族の力を借りようとはせず、自らの力でなんとかしようと、
日々の生活をStruggleしていきます。
それは自分たちが失ったものであるがゆえのことなんでしょう。
しかし、弱っている彼らにとって家族は唯一無二の存在で、
その触れ合いを通じて己を取り戻していく。
特にコナーと父親の関係性が好きでした。
愛憎入り乱れつつ、男2人で生きてきた
それは死線をくぐり抜けてきた戦友さながらの雰囲気。
金魚を弔うために向かった海での2ショットは大好きでした。
(男は背中で語れてなんぼとはまさにこれ!)
エリナーには家族に加えてキーとなるのが大学講師。
彼女自身は結婚して子どももいるけど何年も会っていない。
はじめ、家族が彼女のことをハレモノのように扱うのに対して、
何も知らない彼女は遠慮なく意見を述べてくることに、
はじめは不安を覚えつつも「子どもを亡くした人」
というレッテルから解放される彼女の
生き生きとした表情が印象的でしたね。
ドライブデートが本作の一つのキーで、
物語の中盤でエリナーがコナーの店を訪問し、
そこから2人で目的地の無いドライブを始めるんですが、
豪雨で立ち往生してしまう。そこでいい雰囲気になるものの…
っていうね〜このデートが始まるまでの流れがポイントで、
このドライブデートはエリナーにとって、
コナーと過ごしたかけがいのない思い出の一つな訳です。
「同じことをすれば、もしかしたらあの頃の気持ちが…」
というテンションで挑んでいる訳です。
一方のコナーはその思い出のことを特に気にしていない。
自らが大切だと思っていることは必ずしも他人が大切に
思っている訳ではないというテーマがどーんと押し寄せる。
しかも、この悲惨な結果に終わるドライブデートは、
HerとHimで微妙に異なっている。
単純に視点、カット割りが異なっている作品ではなく、
2人の思い出ベースで作られているがゆえの仕掛け。
こんなん見たことないよ!!
コナーが引っ越す直前からラストまでの流れも
2作間で異なる部分が多くて楽しかったなー
ラストこそどっちを先に見るかで全く印象が異なると思います。
見た目で敬遠している人にも大推薦の傑作!