むらさきのスカートの女/今村夏子 |
今年は著者の作品を読みまくっているのだけどもついに芥川賞受賞作品である本著を読んだ。これまでと同様に卑近な出来事が不穏に小説へと昇華されておりオモシロかった。
清掃員の仕事場での各やりとりがすべて既視感だらけであるにも関わらず、あるあるに収束しないところがかっこいい。あとがきで筆者も述べているとおり、傍観者というクッションを一つ入れることで世界の見え方がガラッと変わり、そこに不穏さが見事に出現。その不穏さだけではなく本著では物語全体のギミックとして機能する(具体的には非正規雇用で不安定な環境での労働にスタックする女性を小説で表現しつつ物語の駆動力に寄与する)ようにもなっており、これまで読んだ作品には見なかったアプローチで興味深かった。代替可能であるというのは聞こえはいいが、誰でもいいことと同義であり社会から簡単に弾き飛ばされることを改めて感じた。
また同調圧力は著者の作品で欠かせないテーマの一つだと思うけど、今回は無垢な女性がその場の空気に合わせていたら、その場に存在する人間の負の部分を無邪気に吸収して、最終的に皆から忌み嫌われてしまう寓話のような設定がオモシロかった。「皆がやっているから大丈夫」と「皆がやっていないからダメ」は表裏一体だし、そのラインは極めて曖昧であることを教えてもらった気がする。
最後に著者のエッセイが付録的についているのもありがたかった。いい意味で本当にその辺にいそうな人が類稀なる観察眼を持ち日常を唯一無二の小説にしていると思うと痛快だった。とんこつQ&A読もう〜
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