一緒に生きる 親子の風景/東直子 |
育児本については良さそうなものを常に探しているけど、なかなか読みたいものに出会う機会が少ない。そんな中で出会った本著はとても素晴らしかった。
著者自身は子どもから手が離れており思い出を回想しつつ現在の社会における子育ての雰囲気などについてつらつらとエッセイを記している。著者はもともと歌人としてキャリアを始めているので各エッセイに絡めて短歌が紹介されている。そのスタイルが読んでいて楽しかった。短歌や俳句は興味があるのだけども歌集や句集を買ってもただただ読み下してしまい、どのように楽しめばいいか分からず挫折することが多い。そんな身からすると各歌のどこが興味深くてオモシロいのか解説してくれているのがありがたく、また育児にまつわる短歌なので今同じ場面を過ごしていることもあり楽しめた。(グッとくる短歌は色々あったが俵万智はやはり別格だった)
育児真っ最中の立場だと余裕が生まれにくく日々の一つ一つの出来事に思いを巡らせることは難しいことも多い。しかし本著では経験談として何が尊いか、何が楽しかったかを率直な言葉で表現している。そんな著者の言葉から、目の前で起こっていることはかけがいのない出来事の連続なのだ、という考えを得られた。文体はおおむね柔らかいのだけど、ときに本質をつくパンチラインがそこかしこにあるので読んでいてハッとすることも多かった。一番くらったラインを引用。
たくさんの偶然が重なって家族となり、さらに家族としての必然の時間を重ねて、今、ここにいる。子どもがなんども気に入ったものを繰り返すのは、偶然得た今を安心し、満喫するためなのではないかと思う。
作品内の挿絵がめちゃくちゃかわいいし本の装丁がとても美しいので本で買うことをオススメ。
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