2022年11月25日金曜日

犬のかたちをしているもの

 

犬のかたちをしているもの/高瀬隼子

 レコメンドしてもらったので読んでみた。セックス、出産、社会での立場などを通じて男女間の性差についてじわじわと炙り出していく物語でオモシロかった。

 男性の立場で読むと胸が痛いというか、子どものことについて決定権を持っているのは多くの場合女性であり、それに対して男性はあまりに無力かつ無知。また、その苦労を理解していないがゆえに身勝手な行動を取る生き物なのだということもわかる。また女性間での「子どもを産むこと」への認識の違いや子供がいる人生/いない人生、その確率の話など知らないことも多かった。これを「知らないこと」と片付けている、その姿勢へのカウンターが本著の果たす役割だと思う。仮に「子どもが欲しい」と男性が主張しても実際に生まれるまでに献身、思考しなければならないのは女性であり、社会の仕組みとしてもフォローしてもらえるようになっていない。この非対称性についてどこまで意識的でいられるのかを読んでいるあいだ延々と問われているように感じた。

 一番痛烈だなと思ったのは以下のライン。社会において「子どもを持つ親」という立場が果たす無双さとその残酷さが表現されていた。これだけ見ると何を言いたいのか分からないと思うけど読後に読むとエッセンスが凝縮されているように感じた。

わたしのほしいものは、子どもの形をしている。けど、子どもではない。子どもじゃないのに、その子の中に全部入ってる。

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