90年代のこと―僕の修業時代/堀部 篤史 |
先日読んだ火星の生活がオモシロかったので読んでみた。90年代に青春を過ごした著者が個人的な体験を振り返りながら90年代を現在の価値観で相対化していく。著者と同じくヒップホップが好きなので90年代がゴールデンエラであることに異論はないのだけど、どうしても説教臭さを感じてしまった…
テクノロジーが効率を促進してきた結果、カルチャーの周縁を駆逐してきたのは事実だし、失われてしまったものも多いと思う。それと同時に手に入れた便利さ、情報が民主化されたことなど正の側面があると思うのだけど、著者は負の側面しか見ていない気がした。お金や時間をかけて能動的に一生懸命情報を集めてきたことを否定するつもりもないし、自分もそういう時期はあったので気持ちは良くわかる。ただ厭世感が本著全体を覆っているので、そこまで悲観的になる必要があるのか?と思った。ただ実際に書店を経営していて店中の写真だけ撮って何も買わずに、もしくは記念のポストカードだけ買って出ていかれたら、こういう気持ちになるのかも。
なんだかんだ言いつつも30代のミドルチャイルド世代なので著者の気持ちも分かる部分が多い。以下一部引用。
人は常に、理解するのに時間を要さない明快さを求める。反対に非合理さの良さは説得ではなく、時間を伴う感化でしか伝播することはない。
出会ったことのない過去の音楽は等しく新しい音楽であり、どのように並べるかでその意味を定義し直すことができる。先輩のように知識も経験もない自分にとっては、上の世代に対抗すべき手段として「こういう聴き方だってありますよ」と提案する、編集行為こそが唯一の武器だった。
特に二つ目の編集行為、キュレーションの可能性については情報が並列化した今こそ求められることであると思うので意識していきたい。関係ないけどジョナ・ヒルが監督した「mid90s」を早々に見たくなった。
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