旅の効用: 人はなぜ移動するのか/ ペール アンデション |
Kindleのセール本で何かいいのないかな〜とディグする習慣があるのだけど、そこで見かけて読んでみた。コロナ以降、全くもって旅をすることがなくなり早2年。徐々に解禁ムードが漂う中、改めて「なんで旅行するんだっけ?」という基本的な動機を思い出させてくれた気がする。
著者はスウェーデンの方で旅関連の著名な雑誌を立ち上げた人らしい。タイトルがだいぶ硬いので、理詰めでガチガチの議論をしているかと思いきやエッセイで読みやすい。本当にいろんな角度で旅について論考しているのだけど、大きな主張としてはツアーではなく、メジャー観光地ではなく、ゆっくり、長くといったスローライフならぬスローツアーのすすめとなっていた。自分自身は著者の考えと近くて、いわゆる観光名所よりも地元の人がどんな感じで暮らしているのかに興味を持つタイプなので主張に納得することが多かった。ただ何ヶ月も旅に出れるわけでもなく著者と比べて時間に限りがある生活ゆえに予定詰めすぎてセカセカすること多いなと思っていたので、旅慣れた場所で時間をかけてゆっくり過ごす、みたいなことが今一番したいかも。
また著者はインドに心酔しているようで自身のインド訪問時のユニークなエピソードが色々あって興味深かった。ただ旅に対するモンド映画的な態度は若干気にかかった。つまり、あくまで自分はスウェーデンという帰る場所があり、それありきで発展途上国をたまに訪れることで楽しむ的な。それは発展途上国の発展を望まないという態度に映らないでもない。旅の結果、外貨が現地に落ちるのだからいいじゃない、という論は本著でも展開されていたけど、昔からこの手の善に関する議論にすんなりと乗れない自分がいることを再認識した。
完全インドア派がますます加速しているので以下のラインを意識しながら書を捨てて旅に出たいものです。本著内で絶賛されていた「パタゴニア」を次は読もうと思う。
体験が人間を形成してくれるのだ。私たちは体験でできているのだ。体験の結実なのだ。体験する印象が増えれば増えるほど、私たちは人間として成長する。
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