兄の終い/村井 理子 |
義母からレコメンドしてもらって読んだ。軽快な文体なのに起こっている事態は相当ハード、そのギャップがオモシロく超ページーターナーな1冊ですぐに読み終わった。「普通」の家族なんていうものは幻想であり、それぞれに独特な家族の風景があることを教えてもらった気がする。
著者の兄が自宅で亡くなってしまい、その後の対応を事細かに描いている点が最大の特徴。自分自身は現時点で幸いにも近親で亡くなった人がいないので知らなかったけど、人が亡くなるとどういったタスクが発生してそれをいかにこなしていくか?が淡々と書かれておりそこが知らないことだらけで新鮮だった。この手の話はウェット方向に展開していくのが世の常だけども、そこを裏切っていく。「唯一の肉親だった兄なのにドライすぎる!」と怒る人もいるだろうなと想像つくのだけど、それが前述した家族の在り方は千差万別だということ。家族関係に杓子定規が通用しないことを気づかされた。
兄が亡くなった結果、取り残された子どもをめぐるやり取りの数々が一番グッときた。子どもをめぐる親権のデリケートさは想像以上だし、父を亡くした子どもに対して周りの大人たちが全力でケアしている様に世の中もまだまだ捨てたものではないなと思えた。特に子どもが転校することになり小学校で開かれるお別れ会のくだりでは涙が…今の時代にこんなピュアな感情が転がっているのか?と俄に信じ難いくらいに美しい場面で、それだけでも読んで良かったなと思えた。
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