Schoolgirl/九段 理江 |
女生徒を予習して万全の状態で読んだ。結果かなり大きな主題になっていた(女生徒はKindleで青空文庫になっているので確実に読んでおいた方がいい)ので読んでおいて良かったし、女性の自意識のいろんな意味での「アップデート」に関する話でかなりオモシロかった。「ぴえん」という病を読んだときも思ったけど自分はもう完全におじさん以外の何者でもないのだと痛感した。自虐はしないけど自戒はしたい。
芥川賞候補作になった表題作。中学生の娘を持つ母親の視点で物語は進行し、娘がめちゃくちゃ「意識高い系」Youtuber という設定になっている。親子の場合、年上である母親の方が物を知っているという設定が多いと思うけど今の時代はそうはいかない。知の高速道路でスーパーカーを華麗に乗りこなす娘の方がはるかに物を知っていて世界、社会を憂いている。太宰の「女生徒」も同じく大人びた少女の話だったけどギアが違っている。一番スリリングだったのは小説に関する娘の論。メタ的展開は珍しくないとしてもそこで言及されるコストパフォーマンスの話や意味のないものへの無関心っぷりは巷で話題のひろゆきバイブス満点。これが多くの若い子の本音だからひろゆきが人気なのも察し。小説なんて人がついた嘘であり、そんなことで一喜一憂するのではなく現実社会を見て困っている人の少しでも役に立つような生き方をすべきと滔々と諭していくところが圧巻。母親の自意識が語られながら、合間に娘がYoutubeで話す内容をないまぜにしながら終盤でのスリリングな対話(言い合い)になっていく感じとエンディングのキレの良さが最高だった。
もう1つの作品である「悪い音楽」含めて、社会的に品行方正であるべきとされる母親や先生も1人の人間であり欲望の赴くままに振る舞ってもいいじゃないかという緩やかな肯定が見える。著者が立場に苦しむ大人を憐れみと慈しみの気持ちで見守っているような文体に思えた。次の作品も必ず読む。
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