ele-king vol.27 |
日本のヒップホップ特集で表紙がISSUGIなら読むしかないということで読んだ。自分の好きなヒップホップが何なのか?改めて考えられるような1冊になっていてオモシロかった。(「日本ラップ」という表現には馴染めないけども)
自分自身は日本のヒップホップをどちらかといえば「文脈魔(©︎R指定)」的な楽しみ方をしていて、音の魅力はやはりUS(最近では韓国)にどうしても惹かれる。その中でもやはり異質なのはISSUGIを中心としたDogearr周りのサウンド。彼らが出てきた頃は90sオマージュの1つの表現だったけど、それを15年近く貫き通した結果、日本独自のブーンバップのサウンドができあがってきた。さらにここ数年はリリックの円熟味が加速度的に増しており無双だなと個人的には思っている。そんな中でのインタビューでパンチライン連発で痺れまくり…自分のこと信じてやり抜いた人だからこそ見えるビューがあるのだなと思った。細分化が毎年のように進む中でこのラインが一番芯を食ってた。
ヒップホップはかっこいいか、ダサいかのふたつしかないんで。
ついこねくり回してベラベラ語ってしまう病気に罹患している身からすると恥ずかしい。話はもっとシンプルだったことを思い出させてくれる、そんなラッパーISSUGI。これからも付いていきます!と言いたくなった。
今回の特集はサウンド面からのアプローチが多くて、歌詞の意味やアルバムのテーマについてそこまで深堀りしないという今までの日本のヒップホップ特集では見かけないタイプなのが読みどころ。ralph&Double Clapperz、Seihoあたりのインタビューはサウンドとラップの在り方に着眼してて、いわゆる「村」のインタビューなら絶対言及されないだろう話があってオモシロかった。特にSeihoの後半の話が攻めに攻めていて、ネットでわちゃわちゃなりそうな大胆な議論だったので好事家の方は読んで考えてみるのがオススメ。
インタビュー以外はコラムとディスクレビューとなっていて、これからヒップホップを聞きたい人にはうってつけな仕上がり。(QRコードが貼ってあって時代を感じた)そして、もう1つ今回の特集が偉大なのは書き手が新鮮な面々であること。もう見飽きたぜ!っていうくらい同じ人たちに牛耳られている世界だけど、こういうトライがあってこそより評論文化は豊かになると思うし、それに呼応する作品が生まれてくるはず。好きだったのは吉田雅文、荘子itのコラム。吉田雅文が特定のビートメイカーたちを「音響をディグする」という観点で捉え直しているのが最高に刺激的だし、荘子itは完全に菊地成孔のフローなので、その1点で好きになった。
このカルチャーが大好きで15年近く狂ったように聞き続けているけど未だ飽きないし、これからがますます楽しみなのでシンプルにかっこいいラッパーがたくさん出てくる未来を期待している。
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