黒沢清の映画術/黒沢清 |
古本屋でたまたま見かけて調べたら絶版していたので何かの縁と思って買って読んだ。キャリア初期から2005年までの作品をインタビューとともに紐解いていてめちゃくちゃオモシロかった。(そして数年前に初期作品が NETFLIXで開放されていたのに見逃してしまったことを後悔…)
冒頭からびっくりしたのは蓮實重彦の薫陶を受けまくった映画好きだということ。立教大学出身で蓮實重彦が現在ほど権威化する前から彼の授業を受けていて、それが礎になっているそう。どういうポリシーで作品作りをしているか、そのショットがどういう意図なのか?まで、一作品ごとにかなり細かく語っていて、黒沢清の映画に対する認識が知れて興味深い。また彼の映画製作の歴史が彼の人生そのもので、日本の映画界をサバイブしてきた過程を説明していて厳しい世界だとよく分かる。さらにオモシロいのは登場人物が日本の映画産業の中心人物たちだということ。そういった仲間、先輩、後輩、ライバルへの思いをかなり赤裸々に語っている。中でも伊丹十三との複雑な関係は全く知らず、人間同士だから色々あるのだなと遠い目になった。
黒沢清の映画のオモシロさはホラーとしてのストーリーや設定の魅力もあるけれど、やはりショット、カットに対する強烈な美意識を堪能できるところだと思う。映画というメディアでカットを割ることに相当意識的で可能な限り割らない。なぜならカットを割る=嘘をつく行為だから。それこそフィクションなんだけど追体験装置としての映画の機能を最大限に発揮しようとしていることが分かって勉強になった。こういった職人気質があり芸術としての映画を極める人なのかと思いきや、分かる人だけ分かればいいというスタンスではないところもオモシロかった。つまりピンク映画、Vシネを経ているからこそだと思うけど、職業監督としての責も引き受けていく姿勢がかっこいい。この本を読んだ上でフィルモグラフィーを再見するのはかなりオモシロそうなので時間かけてじっくり映画を堪能したい。
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