滝口悠生さんの作品ということで読みました。
受賞した頃のSession22で書評家の豊崎さんが
本作を激押ししていたので前から気になっていた作品。
いやー完全にぶっ飛ばされましたね。
最近ノンフィクションに傾倒しつつあって、
小説にイマイチ乗り切れてなかったんですが、
こんな語り口が許されるのか…!
という衝撃があったので過去作を
もっと読んでみたくなりました。
本作は寝相、わたしの小春日和、楽器
この3つの中篇で構成されています。
どの作品にも共通するのは人称の入り乱れ。
死んでいないものでもその手法で描かれていましたが、
かなりシームレスというか整理されていたのに対して、
本作は混沌としていました。
それが一番強烈なのが楽器でいちばん好きな話でした。
はじめは仲の良い男女4人組が埼玉に
遠足へ行くという日常系の話かと思いきや、
後半から見たことない世界へと唐突に連れて行かれる。
本の表紙がまさにそれで男女4人組が
ある家にたどり着き、その家の磁場(?)によって
4人それぞれが自分の世界へと没入していく。
それに加えて家の中で繰り広げられる
他人の家族の宴会の様子も同時に描かれています。
登場人物が10人くらいいて、
それぞれの視点を行き来するからクラクラする。
今年を象徴する言葉として"post-truth"がありますが、
まさに本作は事実の向こう側にリーチしていると思います。
それは主観の強さと不確かさの両方を
バランス良く描いているから。
自分にとって都合のいいことばかりを
鵜呑みにすることは良くないなーと思うし、
他人の気持ちを想像することは必要で大切なことだと感じました。
それを説教臭く言うわけではなく、
人によって聞こえ方が大きく異なる「音」を
媒介としているのがオモシロかったです。
次はタイトルが気になっている、
ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスを読みたいです。
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