きょうのできごと、十年後/柴崎友香 |
続編が出てると知れば読むしかなく前作の記憶があるうちに読んだ。現在の年齢が登場人物達に近いこともありかなりスルスル読んだ。本著単体での魅力と言われると難しいけど、あいつらが元気で生きている、それだけで嬉しいのであった。
大学生だった登場人物たちが社会人となった十年後。それぞれ労働者としての立場が異なり各人の悩みが描かれているのがオモシロかった。物語の展開に奉仕しないディテールの細かさは健在で一体どうやってここまで社会人の仕事における悩みを思いついたり言葉にできたりするんだろうか。言語化しづらいのだけども、そっくりそのまま境遇の人が街に歩いているのではないか。そういうリアリティのレベルだ。
十年となるとちょうどキャリアについて考える最初のフェーズということもあり各人のシビアな人生の機微が伺い知れる。自分自身も同じようなタイミングで人生の舵取りを変えたこともあり当時のことを思い出した。特にかわちくんが上司と顧客訪問するシーンは既視感しかない。同僚、上司と昼食で話すのって意外に難しい。夜の飲み会とは異なりその場のムードで何となく流れていくことが少ないから。それっぽい言葉で時間を埋める展開がリアル過ぎた。またポスドクで忙しい日々を過ごす正道くんの姿もあり得た自分の未来に見えたし修論間際に深夜まで実験したことも思い出した。
アンチ・アンチ物語、つまり逆張りを繰り返した結果、笑ってしまうほど派手な展開が終盤に用意されており虚を突かれてオモシロかった。「起こるときは起こるんやで」というメッセージなのか。いつか20、30年後とかも出て欲しい。
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