2023年12月6日水曜日

アルケミスト 夢を旅した少年

アルケミスト 夢を旅した少年/パウロ・コエーリョ

 JJJの傑作アルバム『MAKTUB』のタイトルになった、「マクトゥーブ」は本著から引用されたということで読んだ。寓話性がかなり高く今の年齢だと若干しんどい部分もありつつ描かれている内容は至極もっともなことなので若い頃に読んでいればもう少し違った感想を抱いたかもしれない。

 サンチャゴという少年が主人公で元々羊飼いだったが、宝の在処を告げられる夢を見たことで仕事をやめて宝を探す旅としてエジプトのピラミッドを目指すというのが大筋。その道中でさまざまな出来事が起こり、そのどれもが教訓めいており寓話性が高い物語となっていた。いつもは物語の中で自分なりの解釈や感じ取ったメッセージなどを文字にしているけど、こういった作品はメッセージ性が強く解釈の幅が大きくない。ゆえに窮屈さを感じてしまった。またそのメッセージが大きく要約すると「自分の直感を信じろ」「夢をあきらめるな」「好きなことをしろ」というもの。現状、大好きとは言い難いことで金を稼ぎ暮らしを営む30代サラリーマンからすると眩しすぎるし「そんなに世の中は甘くない」という凝り固まった思想が脳を支配しているので、これらのメッセージに乗り切れなかった…なんなら主人公ではなくクリスタルを売る商人側に感情移入してしまい自分の加齢を突きつけられたような気持ちになった。

 「マクトゥーブ」という言葉は「それは書かれている」という意味だと本文中で何度も登場する。すでに決まっていて運命を直感するようなニュアンスの言葉であり、JJJがこの言葉をタイトルに込めた意味を考えながらアルバムを聴くのもまた一興だと思う。

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