2023年10月12日木曜日

palmstories あなた

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 個人による出版社が増えている中でも最注目しているpalmbooksの新作。最初に出たじゃむパンの日が滅法オモシロかったが今回も独特の余韻があって素晴らしかった。本作の方がより編集ひいては出版社の意図が短編の内容、構成、装丁などを含めて緻密にデザインされており、これは個人出版だからこそできることだと思う。

 5人の小説家による短編集で、すべてが二人称で書かれている。これがかなり新鮮。短編集において話の本筋はつながっていないが、緩やかに連帯しているケースはよくあるけど、人称を統一しているのはとても新鮮だった。そして二人称の解釈が作家ごとに全く違う点もオモシロい。単純に「あなた」へ話しかける、問いかけるだけでは済ませないギミックを各人が用意していて楽しかった。そして縛りがあるゆえに各作家の特徴が文体を中心に色濃く出ているのも興味深かった。

 そして何よりも感動したのは装丁だった。電子書籍もガシガシ使っている身でフィジカルとしての本の魅力を感じる機会も減る中、本著はそれがふんだんに味わえる。出版社の名前のとおり掌に収まるサイズが絶妙…このサイズ感と二人称が持つ距離感のマリアージュで小説が何倍にも輝く。本は文章だけではなく装丁も含めたトータルアートなんだと気付かされた。今後の出版も追いかけていきたい。

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