2023年2月7日火曜日

学校するからだ

 小説家の滝口悠生さんにポッドキャストでおすすめいただいて読んだ。「現場」の重要性というのは大好きなヒップホップのカルチャーでもよく語られることで、それは学校にも当てはまると知った。そして自分の学校に対する理解のなさ、解像度の低さを恥じた。というくらいに先生、生徒を含めた今の学校がどういう実情なのか知ることができてオモシロかった。

 学校の先生かつ批評家という特殊な立場の著者だからこそ語れる現在の学校。コロナによりディスタンスを保たなければならない社会になったからこそ改めて見えてきたであろう、学校における身体性に対する考察はどれも興味深かった。学校の先生と現在のお笑い芸人の相似性の見立ては考えたこともなかったし、論文執筆とヒップホップのサンプリングカルチャーはヒップホップ好きとしては唸りまくりだった。こういった学校教育に対する批評的な視点が一番好きな点だった。

 後半はより具体的な先生や生徒のエピソードを引用しながら著者の意見を知れる構成。エッセイに近いのでかなり読みやすかった。文章がうまくて読みやすいのはさることながら、一つの事象に対して何が議題なのか?の論点整理がめちゃくちゃ分かりやすい。そして本著の主張の中で一番刺さったのは物事を単純化して分かった気にならないことである。安易な二項対立を用意してコスパや勝ち負けでなんでもすぐにジャッジしようとするが社会でそんな単純な問題は存在しないことを痛感した。机上ではいくらでも吠えることができるが、実際の世界、社会には人がいて身体がある。学校という不特定多数の集団の中で考えると見方が変わるし、今のインターネットを中心とする言論がいかに幼稚化しているのか痛いほど伝わってきた。一番エネルギーを内在しているだろう学生たちの身体性を著者経由で少しでも体感できて良かったと思う。まだまだ家にいがちなので、分かった気にならないで何かあれば現場を大事にしていきたい。

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