トーフビーツの難聴日記 |
tofubeatsの新しいアルバムのリリースと共に発売された日記。2018-2022年までの音楽活動、私生活までまるっと収録したどストレートな日記でめちゃくちゃオモシロかった。法人を立ち上げて音楽活動しているのは知っていたけど、思っていた以上にガチ自営業でミュージシャン自身がここまで裏方業務をこなしている例が他にあるのだろうか…
生活のことが細かく書かれており、それだけで読んでいるのが楽しい。神戸→東京でいわゆるシティライフを謳歌している様子も楽しいし、事務所の漏水トラブルに悪戦苦闘している様はまさに人生。さらに2020年以降はコロナ禍の音楽家の苦悩がふんだんに書かれており、クラブミュージックが出自でここまで厳しくコロナに接していることにも驚く。自分で決めたルールとカルチャーに対する思いで逡巡しているところは真摯だと感じた。
音楽活動でリスナーが目にするのはステージ上できらびやかに歌ったり演奏したりする姿だけども、そこに到達するまでのタスクの量が想像以上。それらを文字通り1つ1つ潰してく様はプロダクティビティに対する執着を感じて愉快だった。自分も広い意味でプロダクトが世に出るまでの下準備の対応を仕事にしているので、その点では対象が異なるだけで近いものを感じた。
この日記の一番の醍醐味は音楽業界やコンテンツに対する実直な気持ちの表現だと思う。日記の合間に挟まれる関係者の各コラムで言及される「実直さ」が存分に発揮され「そうなんや…」という話の連発で驚く。それはここまで言っていいのか?というレベルで本を読んだ人にだけが楽しめる最高のギフトとなっている。ここが変だよ音楽業界、とこれだけ言える人が今いるのだろうか。結局自分でコントロールしている領域が広いからこそ自由に物が言えるのであり自分も意識していきたい。ちなみに神戸の1003という書店で買うと特典で直近の日記がついているのだけど、そこで言及される松任谷由実の発言にまつわるDTMミュージシャンの矜持がめちゃくちゃ良かったので1003から買うべき。
今回のアルバムはむちゃくちゃかっこいいのだけど、本著を読むとアルバムがさらに肉薄してきて違った響きになって二度美味しい。次は好書好日で取り上げられていたECDIARYを読もうと思う。
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