クリティカル・ワード ファッションスタディーズ 私と社会と衣服の関係 |
コロナ禍で誰とも会わなくなって久しい中、服に対するモチベーションが一向に上がらない。もともと別におしゃれなわけでもないし、特段のこだわりもないので、このままだと全身ファストファッションおじさんになりそうと危惧し本著を手に取った。そもそも服を着るとは?ファッションとは?といった超ベーシックな問いに対していろんな領域の学術分野から紐解いてくれていてめちゃくちゃオモシロかった。
一部で理論、二部で実例、三部で文献紹介という三部構成になっていて段階的に理解を深めることができるし、深堀したくなったときに追加で文献に当たることもできる親切設計になっているのがありがたい。
読む前からファッションや服を着ることは社会的な行為で他者がいて初めて成り立つものだよなと思っていた。その考えについて文献に基づいて丁寧にどういうことか、本当にいろんな切り口(アイデンティティ、消費などといった観点)で書いてくれているのがオモシロい。文献でしっかり補助してくれているので、書き手の私見に限らないのだなという安心感もある。
衣服・ファッションの最近のもっぱらの話題はSNSによる情報の在り方の変化とSDGsへのコミットが要求されるサステナビリティへの考慮になっており、その二つが比較的分厚く解説されている点が良かった。前者については今となっては自明のことだけども、インターネット、SNSがなかった頃は情報格差が存在し、例えばファッションショーで紹介された衣服を見ることができる人は限られており、大衆はそこからトリクルダウンで情報が落ちてくるのを待たないといけなかった。また後者については資本主義社会である以上、常に新しい衣服を製造し売り続けなければファッション業界が成り立たないことを前提にしつつ、環境負荷を下げる方向へ各ブランドが画策していることを知れて勉強になった。職種が素材屋なので、その辺りのテクノロジーの進歩の具合にも驚いた。
ジェンダー観点もかなり興味深くてスカート、パンツが生む男女差の弊害を筆頭にファッションが思っている以上に社会における「性別」を規定していることを思い知る。ファッションは自分のアイデンティティを主張するものでありながら、コミュニケーションツールでもありTPOでの使い分けが要求される。この相反する要求を成立させなければならないと考えるとファッション、服装って難しいものだよなーという認識を深めた。ただ結局履いているのはユニクロのウルトラストレッチアクティブジョガーパンツなので早くこのフェーズを抜け出したい。
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