2021年3月29日月曜日

大阪

大阪/岸政彦、柴崎友香

 岸政彦と柴崎友香による大阪にまつわるエッセイの共著。このメンツで大阪のエッセイだなんて期待しかない訳だけど「リアル」な大阪がそこには立ち上がっていて興味深く読んだ。テレビを筆頭にステレオタイプな大阪像の形成と強化は日々加速しており十把一絡げで語られることが多い。やれ話がオモシロいだの、ガサツなところがあるだの。そういったステレオタイプの被膜で覆い隠されている部分を2人が剥いで生身の大阪がボロンと出ていた。それは明確なゴールがないエッセイゆえの魅力だと思う。このもやっと感、まとまりの無さこそが、1人1人の持つ土地の記憶やその思いをダイレクトに表現している証左だろう。
 岸さんは他で育ち大阪へやってきた人、柴崎さんは大阪で育ち他へ移動した人。大人の視点の大阪、子供の視点の大阪が網羅されていて大阪で育った身からするとめちゃくちゃ刺激が強い。彼らは個人的な思い出を語っているだけなんだけど、それは確実に呼び水となり自分の記憶の蓋がばっかん、ばっかん開いてしまう。もう東京に来て8年になり帰る頻度も低くなった今、大阪のどこを歩いていても自分がストレンジャーのように思える一方で角を曲がったところで誰かにばったり会うかもしれない。このアンビバレントな感情はこの先どうなっていくのか見当もつかない。けれど大阪はずっとそこにあって、いつまでもこちらを見ているし、こちらも大阪をいつまでも見ている。

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