R62号の発明・鉛の卵/安部公房 |
安部公房の短編集。SFテイストの話が中心でこれまでに読んだ中では比較的読みやすくてオモシロかった。時代が古いからか今のように人のようなロボット、知能を作ろうというよりも改造人間のような話が多い。人間+αである主人公の立ち振る舞いが奇妙奇天烈でそれだけで十分惹きつけられる。表題になっている「R62号の発明」はまさにそれで死人が改造されて人間に復讐するんだけど、その復讐の方法が変わっていて興味深い。因果応報な感じ。ぶっ飛んだ設定の中にも戒め/教訓めいたものがにじみ出ているのがやはりオールドスクールな作家らしいなと思うし、単純なエンタメでないからこそ時代を超えて支持されるのだと思う。
主人公に名前がついていないのと馴染みのない出来事の連続なのでなかなか話の内容が思い出せないところはあるものの、その中で好きだった話は「盲腸」「鉛の卵」。「盲腸」はヤギの盲腸を人間に移植して藁しか食わないようになれば食糧問題は解決するはずという話で人間の傲慢さに鋭く切り込んでいて好きだった。また「鉛の卵」は冷凍保存されて生き返ったら80万年後で謎の生物に取り囲まれて…王道スタイルのSF。映画「マトリックス」的なエンディングは王道ゆえに既視感あるのだけど、果たして一体どちらで生きるのが幸せなんだろうか?という後を引くような最後になっていてグッときた。文庫の解説の中に自分が著者に惹かれる理由が書いてあったので引用しておく。This is HIPHOP.
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