2026年8月30日日曜日

LocalAlien Caravan in TOKYO Yamiboi To$『YAMIBOISM』 Release Party

 金沢を拠点に活動するYamiboi To$が仲間を引き連れ、東京でリリパを開催するということで見てきた。バチカに行くのは久しぶりで、久々にリアルな現場感を味わうことができて楽しかった。

 諸々家庭の事情をこなしてバチカに到着したのは19時過ぎ。ちょうどD-RAMがライブをしているところだった。こういったヤングガンによるイベントでは、各ラッパーが短い持ち時間の中で切磋琢磨している。その様子を見ていると、自分が若い頃に足を運んでいた現場をレミニスした。

 そんな感傷に浸っているのも束の間、この日見たかったVCE NAVAのライブが始まった。昨年リリースされた『NNN (Never Needed Numbers)』は素晴らしい作品で、数々のラインにくらっただけに、ライブを楽しみにしていた。今回は最近リリースされた『Aura』からの曲を中心とした構成。声色の魅力、一言一句聞き取れる明瞭なラップ、ステージ上での佇まいなど、ライブでさらに魅力が増すタイプのラッパーだった。ラストは青森を誇るアンセム「tsugaru Flow」で締め。まさか聴けるとは思っていなかったので最高だった。

 その後はD-RyoogaによるDJタイム。Andersenの旧名義RUPRECXNTAのクラシック「I feel like I'm Zlatan in 2012」がかかってぶち上がる。「基本Boujee、たまにムリ」「レベチ」など自身が手がけたバンガーを投下しつつ、MIKADO「Time Is Money」なども織り交ぜてフロアを沸かしていた。最後はグンソーウォークで締めたのち、金沢勢のライブがスタート。

 トップバッターはYÖSY。「高見栄え」でフロアを完全にロックしていてかっこよかった。新曲は「Cho Wavy De Gomenne」オマージュのD-Ryooga謹製のビートでもかましていた。先日のソングウォーズでSieroが同様のアプローチをしており、JP THE WAVYがリバイバルする時代に突入しているのかと思うと、時代の移り変わりの速さに少し怖くなった。

 続いてはAndersen。RUPRECXNTAの頃から好きなラッパーだが、名義変更後はソングライティングのレベルが一段上がったと感じるアップカミングなラッパーである。(RAPSTAR2026の応募動画で知った人も多いだろう。)繰り返し聞いていた曲が目の前で歌われると、感動もひとしお。それはバチカという小箱だからこその魅力で、まるで自分のために歌われているかのように錯覚すら覚える。最新EP『Spring Tape』で一番好きな「Guala」を聞けたことが嬉しかった。他にも『Sen』からは「田んぼ」「Don’t You Be Fuck The Way」も披露され、後者のNoDoubleMane生の厳かなストリングスをでかい音で聴くのは格別の体験だった。正直いえば「雪山」が聞きたかったところではあるが、それはまたの機会に。新曲の披露の仕方がうまくて「I don’t know how you feel, You don’t know how I feel」というフックを一度歌ってから一旦ホードン。自分の気持ちは音楽でしか伝えられないことをMCで伝えてから再度歌い始める。新曲ながら観客が乗りやすい細かいライブにおける工夫が印象的だった。

 そして、トリのYamiboi To$。最新作『YAMIBOISM』の「intro」を出囃子に登場して、そのまま「High」を披露すると会場は大盛り上がり。驚いたのは、そのライブ巧者っぷりだ。こなしてきた現場の多さを想起させる身のこなし、盛り上げ方は堂に入ったものだった。そして何よりラップがうまい。音源ではいくらでも加工できる時代、このフィジカル性は何よりの武器であり、ライブでしか伝わらないパッションが確実にある。特に顕著だったのは「TREASON」だろう。Tyga「Rack City」をオマージュしたベースが鳴り響く中、タイトなフロウでかましており、今回のアルバムの中で最もライブ映えしていていた。これらを含めて『YAMIBOISM』の楽曲をすべて披露したのち、「疲れたから誰か代わりに歌ってくんないかな〜」と言うと、バックDJの108が「はやく言いたいSkit」でフロントマンとして登場。そこからTJOミックステープの流れへ突入し、YÖSY、Andersenが合流、『108freestyle』『#yummyboitos』でフロアは大爆発していた。ソロラッパー群雄割拠の時代においては、こういったコレクティブのユニティが観客との連帯感を生む装置として機能することを体感した。

 その後は同作収録の「今年の夏もいっぱい遊びたい」や自身のパートナーに向けた新曲も披露しつつ、終盤には「MUNEHARUWA」「賃貸重低音」という二大アンセムが投下。Yamiboi To$を代表する2曲であり、1年越しに生で聞くことができて感無量だった。

 いずれの曲も自分たちを誇るエンパワメント性に溢れた曲であり、等身大だからこそ響くものがある。それは彼らのコレクティブのあり方にも、この日のパーティーのあり方にも通ずる。RAPSTARやPOP YOURSといった大きな舞台を通じてスケールすることが、いつから当たり前になっているように見えるが、本当にそれだけなのか?大人を介在させることなく、ヘルシーな形で自分たちの音楽、レガシーを構築していった先にこそ持続可能な未来があるのではないか。だからこそ、金沢から仲間みんなで東京までやってきて勝負する今回の試みは、とても眩しく映った。ラッパー、ビートメイカー、エンジニアがそれぞれの持ち場で最大限の力を発揮して、賃貸で重低音を鳴り響かせながら、自分たちの力でステージを上げていって欲しい。

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