僕は僕のままで/タン・フランス |
NETFLIXの人気リアリティショー「クィア・アイ」のメンター役として出演中の著者によるエッセイ。「クィア・アイ」は人生レベルで影響を受けた番組の1つでファッション担当の著者がいかにこれまでストラグルしてきたかの自伝のようなエッセイでオモシロかった。
番組を見て彼に抱いていたイメージはとにかくポジティブ。見た目がイケてなくてファッションに興味を持っていない人や、変なこだわりを持つ人にTPOもしくは自分に似合ったスタイルを見つけてもらうために、口八丁手八丁で前向きに説得していく姿勢が印象的だった。しかし、それは番組に合わせてのことであり、本著では彼のより繊細な部分を知ることができる。イギリスで育ち、ゲイかつ南インド系というダブルマイノリティで生きてきた苦労に関する話が多く占めており、自分が見ていたタンは本当に一部なんだと思い知った。
もともとショウビズの世界とは無縁の人で自分のファッションブランドを立ち上げてUSへ移住してきた苦労人だということも今回初めて知った。仕事で苦しんだ話もたくさん書かれていて、これも同じくポジティブなイメージしかなかった彼からは想像持つかない話の連続だった。USで成功するのは並大抵のことではなく難しいのだなと感じた。
こういった苦労話を単純に「しんどかった」とだけ書くのではなく「こうして乗り切った」とか「こうしておくべきだった」とか人生訓になっているので自分ごととして考えて読みやすいのも良い点。そしてUKスタイルでどれも皮肉たっぷりで書いているので個人的には好きだった。特にインスタで彼に届いたクソDMへの返信を書籍内で行うという見たことない取り組みが最高だった。「クィア・アイ」では超紳士的な姿勢を貫いている彼だって一人の人間なのである。
「クィア・アイ」ファンとしてはエミー賞受賞の日のエピソードは相当グッとくるものがあった。名も無いマイノリティとしてのゲイ5人がそのプロフェッショナル性と多様性を駆使して世界を変えていこうという姿勢が世間に評価された瞬間なのだということがありありと伝わってきた。現在S6まで公開されており若干マンネリ感あるものの見るたびに自分を律せねば…という気持ちにしてくれる数少ない番組なので末長く続いてほしい。
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