木になった亜沙/今村夏子 |
今村夏子作品を読んでいこう!の流れで読んだ。今の自分のモードと合っていることもあるのだけど、こんなに毎回心の奥底をギュッとさせられるのは本当にすごい作家なんだなという感想しかない。
本作は短編集で「承認」にまつわる物語が収録されている。SNSの隆盛により現代社会において「承認」は可視化が進み、人生の大きなファクターに最近は躍り出ているわけだけど、著者は徹底的に「承認」されない側の切ない視点を描いていてオモシロかった。表題作では主人公が自分の手でギブするものがテイクされない辛さ、もう1つ収録されている「的になった七未」ではさらに進んで存在の希薄さにまで迫っている。いずれの主人公も自分の存在を社会・世界に知らしめるべくあきらめずにストラグルし小さい子どもが生を全うしようとする姿勢には心打たれる。ドライな文体で辛さの局地まで登場人物を追い込むがゆえに物へと擬態化していくところが切なく感じた。しかもその擬態化がさらっとしているところも乙。あとは芥川賞作品を残すのみ!
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