ヤクザと原発 福島第一潜入記/鈴木 智彦 |
サカナとヤクザがオモシロかったので読んでみた。2011年の東日本大地震により起こった原発事故からここにヤクザ利権があるはず!と潜入調査するルポでオモシロかった。原発事故からもう10年が経ち、あの当時本当にどうなるか分からなかった放射能の恐怖を思い出させるだけの情報が詰まっていてもっと早くに読んでいれば良かったなと思う。一方であのとき当事者たちがどんな思いでどんな作業をしていたのか記録に残っていて、それを知ることができる本、読書の尊さも感じた。
タイトルにもあるとおり原発とヤクザの関係を探っていくのだけども産業構造からしてヤクザが入り込んでいるのは自明に近いという話が衝撃。今に比べて暴力団やヤクザへのアレルギー反応が牧歌的だとはいえ、あれだけ注目されていた原発事故の収束に暴力団がコミットしている。そもそも原発建設する際に田舎の村社会に入り込んでいく必要があり、揉め事の仲介人である暴力団が必ずそこにいたという話や社会の矛盾に寄生していくのが暴力団という論旨は納得できた。
万が一の事故の際、被害を最小限にとどめるだけではない。地縁・血縁でがっちりと結ばれた村社会なら、情報を隠蔽するのが容易である。建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎でなければならないのだ。
ヤクザとは関係なく原発作業の潜入ルポとして抜群にオモシロい。全く知らない世界に対して筆者が必死にくらいついていく。マスコミである身分を偽っているので常にスリリングな展開も最高。当然放射能は怖いものだけど、防護服による熱中症が一番危ないという現場取材してないと分からない話もあり興味深かった。暴力団ダメ絶対!と抑止していくのはいいけど、結局それが表面上だけのアンダーコントロールなのであれば、それこそ原発とうりふたつ。原発、ヤクザとどう向き合っていくのかは誰かではなく自分の話でもあるなと感じた。
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