2021年8月18日水曜日

日本の名随筆 古書

日本の名随筆 古書

 金沢へ旅行に行った際に古書店でサルベージした1冊。過去に同シリーズの「毒薬」というのを読んだことがあり、今回も買ってみたところ本作もオモシロかった。時代も場所もバラバラで、古書について語ったエッセイを集めてきているのだけど、皆の古書、古本に対する愛憎が溢れる文書ばかり。60-80年代は本が娯楽だったり情報源を担っていたことを実感した。今ではなかなか考え辛いけど。
 驚いたのは「レアなものをいかに安くゲトれるか?」という古本カルチャーが昔からあって、先人たちも古書店に日々通い審美眼を磨いていたこと。今はネットがあるし中古品だとメルカリも普及しているので、相場とかすぐに分かる時代になってしまったけど、たまにブックオフや街の古本屋とかで「これがこの値段で?」みたいなことがあるとブチ上がるタイプなので首を縦に振りながら読んでいた。ただ、この本に出てくる人たちは本気の蒐集家なので配偶者からの冷たい目に逡巡しつつリミッター解除して爆買いしているのも気持ちよい。
 新刊ではなく古本を愛するのはセレンディピティが大きい。本屋は新刊が均質に並んでいるわけだけど、古本屋は入荷状況によってカメレオンのように棚が変わっていく。その本との出会いが一期一会である確率が高いからこそ愛しい気持ちが沸くし通うことで自分の見識が広まっていく感覚も楽しい。以前に友人と正月に酔っ払ってブックオフでノリで本を買う遊びをしていたけど、その頃を思い出したりした。こんな感じで人の数だけある古本の思い出が詰まっているので、ブックオフ大学ぶらぶら学部と合わせて読むのがおすすめ。

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