たんぱく質/飴屋法水 |
信頼のpalmbooksから新刊が出たら、それはマストバイなので読んだ。なんの前知識もないまま読んだこともあいまってかなり新鮮な読書体験だった。小説なのか、エッセイなのか、詩なのか、散文なのか。そんなジャンル分けはくだらないものとしてなぎ倒すほどのインパクトがあった。
書籍の構成自体がユニークで最大の特徴は横書きかつ上下開きという点。本の構成としては極めてトリッキーではあるが、現在人類が最も慣れ親しんでいる横書き縦スクロールの活字、つまりスマホの画面と同じ構成なので文字はスルスル入ってくる。さらに志賀理江子という方の写真が合間に登場することでさながらWebサイトのような見た目とも言えるだろう。
構成の特徴に目を奪われるが小説としてもそれに見合った相当チャレンジングな内容だった。お話は84個のチャプターに分かれており、それぞれがゆるい形で繋がっている。主人公や起承転結がきっちり決まっておらず、たゆたうように文がそこにあるといった印象で読んでいるあいだフワフワした気持ちになった。一方で限りなく著者の実話っぽいところから急にフィクションのような展開へ大きく飛躍する瞬間もあり、そのアップダウンも楽しい。全体として発散しているものの読み終えた後には世界の深淵を見たような気持ちになる。それはタイトルどおり生命の構成要素としてのたんぱく質に注目して、そこを起点に物語をスイングさせているからに他ならない。もんじゃ焼き、タコ、イカ、ゴキブリなどおよそ並列で語られたことがないものが想像しない形でジョイントして物語になる。ミクロとマクロのフォーカスによるスイングもたまらなくてファミレスの床掃除から生命論まで無理なくトランジションしていく感じが心地よいしオモシロかった。最終的には人間の存在論のような話になり大団円。次のpalmbooksの作品は坂口恭平らしいので、そちらも本当に楽しみ!
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